ポーランド映画の現在地<2>製作支援の公的枠組み・個の尊重…「共助」の仕組みが文化につながる
ビエラフスカ氏も、「自分が作った映画は(前政権時代の)8年間、公開されませんでした」と明かす。「コール・ミー・マリアンナ」というドキュメンタリーで、主人公は、自分らしくありたいと願うトランスジェンダーの少女。「ロカルノ国際映画祭など26の映画祭に出品され、賞も取ったのですが、反LGBTの姿勢を取っていた前政権の時代には公開されることはなく、やっと最近になってテレビ放映されました」
会員たちの年齢層に合わせた支援
ポーランドの映画人にとって製作支援の公的枠組みは非常に重要だが、課題は絶えず生まれる。映画作家が映画を自由に作り続けていくために何が必要か、現実を見据えて活動を続けるポーランド映画人協会の存在意義は大きいようだ。
映画人協会は、会員たちの年齢層に合わせた支援も行っている。
たとえば、同協会は『スタジオムンク』という製作スタジオを運営しているが、その主たる目的は、「若い映画作家へのスカラシップ」だ。応募プロジェクトを審査した上で、創作の自由を損なうことなく、プロフェッショナルな環境でデビューできるよう作品をプロデュースする。これまでに長編と短編合わせて300本以上が作られ、主要な国際映画祭などでも上映されている。
今年のグディニアの開幕を飾った「アンダー・ザ・ボルケーノ(火山の下で)」のダミアン・コツル監督のデビュー作「パンと塩」(2022年)もスタジオムンク作品で、ベネチア国際映画祭でオリゾンティ部門審査員特別賞に輝いている。
「中年フィルムメーカーは働き盛りですから、その年代に向けたプログラムは特にないのですが、ポーランドのシステムや法律を彼らにとってより良いものにするよう、私たちは努力しています」とヴォイトヴィチ氏。そして、シニアに関しては、アフターキャリア支援があるという。「彼らの映画コミュニティーとのつながりを保つために、イベントを開催しています。また、経済的問題を抱えていたら支援もできます」