ポーランド映画の現在地<2>製作支援の公的枠組み・個の尊重…「共助」の仕組みが文化につながる
映画振興の中心的役割を果たす公的機関を設け、民間から「共助」の財源を得る仕組みは、確かに、国立映画映像センター(CNC)を中心とするフランスの映画振興のあり方と重なる。
「映画は、本当に多くの人に届く文化。映画館のみならずテレビなどでも見ることができます。しかし、(製作に)非常にお金がかかる文化でもありますから、ポーランド文化省のお金だけでは、ポーランドの映画が必要とするお金を全部まかなうことはできません。国の予算とは別に、民間から拠出を受け、そのお金がポーランドの文化をより豊かなものにするのです」
支援の対象は、主に「映画祭に出すような、アートハウス映画」。つまり映画監督の個性が発揮される「作家主義映画」だ。大衆向けの商業映画や、配信プラットフォームが製作する映画などは支援を受けていないという。
2024年のPFI運用プログラムによると、映画製作支援に割り当てられた金額は合計1億4200万ポーランドズロチ(約53億円)。実際の製作のみならず、その前段階の企画開発も支援の対象になっている。ちなみに、日本芸術文化振興会による日本映画製作支援事業の24年度の交付予定額の総額は、約5億6500万円(財源は、国からの補助金)だ。
「キャッシュリベート」
グディニアの映画祭ではボーダーレスな作品も目立ったが、ポーランドでは国際共同製作も増加傾向にあるという。「国際共同製作により、映画の可能性も、ポーランド人が作るチャンスも、ポーランドにお金が流れてくる可能性も広がります」。その促進につながる、同国内での映画製作に対する「キャッシュリベート」の仕組みも整備されており、PFIがハンドリングしている。一定要件を満たせば、同国内で発生した製作費のうち、対象経費の30%が国庫から払い戻される仕組みだ。
最近の好例が、米国アカデミー賞の国際長編映画賞などを受賞した「関心領域」(ジョナサン・グレイザー監督)。アメリカ、イギリス、ポーランドの合作で、監督のグレイザーはイギリス人、主演はドイツ人俳優、スタッフはイギリスとポーランドなどの混成。第2次世界大戦中のナチスによる大量虐殺を題材にした同作の撮影は、主に、ポーランド南部、アウシュビッツ強制収容所周辺で行われた。