「ネオン」の灯りはなぜ人を惹きつけるのか…札幌から那覇まで日本全国の夜の街を歩いてわかったこと
沖縄のピエロのネオンが語ること
コロナ禍の喧騒、混乱のなかで、夜の街は社会が抱える問題のスケープゴートに簡単にされてしまう不安定な存在である、ということに気付かされた。昼の街も、夜の街も、僕たちの街であることに何の違いもない。このネオン撮影を通して、逆に夜の街が僕らに与えてくれていたものが、浮き彫りなったようにも思えた。 この旅の最終盤となった沖縄で、与那原(よなばる)のパチンコ店を見上げた時、ネオンで描かれたピエロのハンドサインに、ネオンの灯りに託された秘密が示されたような気がした。左手は親指と人差し指を突き出し、Lの字を形どり「LOVE」。右手は指を大きく広げ、僕を遮り「STOP」。ネオンを通して、ピエロが語ろうとしたのは、愛と喪失の物語なのだと、僕は妄想した。 僕たちの日々から何かが失われ、帰るべき場所を見失った時、そんな時は、いつだってネオンの灯りを頼ればいい。ピエロは僕にそう言っている気がした。ピエロに扮した主人公が注目された、映画『ジョーカー』で描かれたように、社会が分断に向かうと言われる昨今であるが、僕が見た与那原のネオンのピエロは、愛と調和、不寛容と分断は背中合わせであり、その選択肢は僕ら自身に委ねられていることを教えてくれた。 夜の街を歩き、ネオンの灯りを浴びた時、どんな感情が呼び起こされるのか、街の喧騒に耳を澄ましてきた。そして、聞こえてきたのは、夜の街を歩いてきた僕たちが織り成す様々な物語の軌跡であった。 < 以下、写真集、写真展情報になります > 『NEON TOUR』 ●写真展 ・キヤノンギャラリー銀座 2025年1月7日(火)~18日(土) ・キヤノンギャラリー大阪 2025年3月4日(火)~15日(土)日曜月曜祝日休館 https://personal.canon.jp/event/photographyexhibition/gallery/nakamura-neon ・写真集へ文章を寄稿頂いた、評論家・與那覇潤さんとのトークイベント 1月10日 (金) 19時~20時先着20名様、キヤノンギャラリー銀座写真展会場
中村 治(写真家)