退屈しない自動車デザイン 大手を負かしたクリス・バングルは「先駆者」か「破壊者」か
BMW Z3(1995年)
BMW Z3は、バングルの指揮下で永島譲二がスタイリングを担当したモデルである。2人は1980年代初頭にオペルで短期間一緒に働いていた。Z3はまた、サウスカロライナ州スパータンバーグ工場で生産された最初のBMWの1つでもある。 ロングノーズ&ショートデッキの伝統的なスポーツカーといったプロポーションは、過去のBMW製ロードスターにも通じるが、前身であるZ1よりも野暮ったさはかなり抑えられている。前輪の後ろにある通風孔は、507への控えめなオマージュである。
BMW Z9グランツーリスモ・コンセプト(1999年)
BMWはZ9グランツーリスモ・コンセプトのデザインを、バングルにゼロから作らせた。1999年のフランクフルト・モーターショーで発表されたカーボンファイバー製ボディのZ9は、凸面と凹面を等しく取り入れた彫刻的な外観を持ち、新世紀に向けてBMWのデザイン言語を予告した。 また、後にバングルのほとんどのデザインを特徴づける、いわゆるフレイム・サーフェシングを業界に初めて知らしめた。そしてZ9は、2003年に登場した新生6シリーズを予感させるものであった。
BMW X5(1999年)
バングルはクリス・チャップマンと密接に協力し、初代BMW X5を開発した。しかしそれは無理難題と言える難しい仕事だった。世界でも屈指のリスペクトを集める自動車メーカーであるBMWのデザイン理念を、まったく新しいタイプのクルマに適用する必要があったのだ。 BMWのデザイン・ルネッサンスは、ほぼ必要に迫られる形でX5から始まった。当時の3シリーズや5シリーズほどスラブサイドではなかったが、これは視覚的な質量を減らすために方策だった。フロントのライトは、E46世代の3シリーズに見られるものと同じものだ。
ミニ・ハッチバック(2000年)
新世紀のミニをデザインするのは、言うは易く行うは難しだった。初代ミニは1959年以来、ハイトーンでトレンディに進化してきたが、基本的な形は変わっていない。X5にも携わったフランク・ステファンソンを含むバングルのチームは、まったく新しいパッケージでミニのエッセンスを伝えることに成功した。 バングルはミニの再発明で得た経験を、自動車以外の分野にも役立てた。「ヘネシーが新しいVSOPコニャックのボトルを作るためにわたしに声をかけてきました。長い間手をつけられていない、象徴的な形です。ヘマはできません。ミニのデザインを思い出しましたよ」と、Car & Driver誌のインタビューで語っている。