スポーツブランド・Onが認知ゼロから愛されるブランドになるまで。駒田博紀が語る「熱を生むブランディング」
ライフハッカー・ジャパンとBOOK LAB TOKYOがコラボ開催するトークイベント「BOOK LAB TALK」。第43回目のゲストは、『なぜ、Onを履くと心にポッと火が灯るのか?』の著者・駒田博紀さんです。 スポーツブランド・Onが認知ゼロから愛されるブランドになるまで。駒田博紀が語る「熱を生むブランディング」 スイス発のスポーツブランド「On(オン)」の日本法人代表として、ナイキ、アディダスなど強豪ひしめくスニーカー市場に挑戦。わずか10年で、熱量の高いファンを擁する人気ブランドへと育て上げた駒田さん。その経験と哲学を胸に、2023年、クラフトビール醸造所「Yellow Monkey Brewing」を立ち上げ、新たなブランドづくりを進めています。 限られた予算の中で、コミュニティを中心としたユニークなマーケティング戦略を展開してきた駒田さん。多くのファンの心に火を灯してきた10年間の軌跡と共に、型破りなマーケティング実践術を語ってくれました。
予算400万円で、日本で4本の指に入るブランドを目指す
駒田さんがOnと出会ったのは、2012年12月。スイス系商社で「TIMEX(タイメックス)」の営業を担当していたときに、創業3年目だったOnの担当になるよう提示されました。 そのとき課されたミッションは、Onを5年で、日本で4本の指に入るメジャーブランドにすること。しかも、与えられたマーケティング予算は400万円でした(駒田さん、以下同) 子ども時代は喘息に苦しみ、体育の授業や部活で取り組むランニングにも苦手意識があったという駒田さんであったが、「このブランドをやるか、会社を辞めるかだ」と上司に迫られ、しかたなく引き受けたと話します。 当時、日本のスニーカー市場の8割から9割は、ナイキ、アディダス、アシックス、ミズノといったすでに認知度の高いブランドが占めている状況でした。 そこに、言ってみれば認知度が1億2000万分の2──いわば、私と上司だけしか知らないブランドが参入するわけです。 そのためのセオリーとしては、マーケティングの基本となるファネル(マーケティング理論では、認知→興味・関心→比較・検討→購入のプロセスを指す)に沿って、必要な施策を打っていくことが必要。しかし、広告宣伝などを合わせると、少なく見積もっても1億5000万円はかかる計算です。 いっそ逆転の発想で、ファネルのなかでも一番消費者に近い、購入の現場からはじめよう、と。 与えられた条件のなかで必死に考え出したのが、日本中の大小様々なマラソン、トライアスロン大会への参加でした。 「コミュニティマーケティングの走り」と言われることもありますが、決して狙ってやったわけではありません。