ゴルフスイングの「軸」って何? 具体的にどこにあって、どうすれば正しい軸を作ることができるのか?
ゴルフのレッスンで何気なく使っている表現の一つにスイングの「軸」というものがあり、多くのゴルファーが安定させたいと考えています。たしかにプロゴルファーのトップ選手のスイングを見ると、体の動きが非常に安定していて、まるで体の中心に1本の軸が通っているように見えます。しかし、そもそもスイングの「軸」とは一体何を指すのでしょう。この記事では、分かっているようで知らないスイングの「軸」について解説していきます。 尾関彩美悠が持ち球のドローでフェアウェイをキープするコツは?「ヒザは前後に、肩は上下に動かせば軸ブレしません」 1.ゴルフスイングの軸とは? レッスンの現場でよく耳にするキーワードのひとつにスイングの「軸」というものがあります。正面からスイングを見たときに左右にブレてないことや、後方から見たときに前傾角が崩れないことを「軸がキープできている」と表現されたりします。そもそもこの「軸」とは何を指しているのでしょう。 ゴルフのスイングは、体を中心としたクラブの回転運動です。つまり、目には見えませんが、体の中心にはクラブの回転運動を作るための一直線の「軸」が存在していることになります。これこそスイングの「軸」と呼ばれるものの正体です。 クラブはアドレス時のライ角に沿うように回転しますので、「軸」がヨコやタテにズレると、先端にあるヘッドの軌道もズレてしまいます。いわゆる「軸」のブレたスイングでさまざまなミスが出る状態です。 この見えない「軸」を上下左右に動かないようにキープすることでインパクトの入射角やフェース向きが安定し、精度の高いショットを打つことが可能になります。 2.スイングの軸はどこにある? スイングの「軸」についてはさまざまな考え方があります。背骨をスイングの「軸」と考える人もいれば、正面から見たときに体を斜めに通る線だと言う人もいます。 これらはスイングの「軸」をキープするための方法論であって、軸のある場所を示しているわけではないとこの記事では考えます。 前述したようにスイングの「軸」はあくまでクラブの回転運動の中心にある1本の線です。クラブを振るとき、ヘッドには遠心力がかかりますので、体はそれと引っ張り合うように動く必要があります。そのため、背骨や体幹といった体の中心にある部分はスイング中、大きく動きますので、「軸」にはなり得ないのです。 体を正しく動かした結果、体の中心付近にできる仮想の線こそ「軸」だと言えます。 ただし、背骨を軸と意識することで、結果的にスイングの「軸」が動かず、整う人もいます。練習時に意識してみて、スイングが安定するようであれば、方法論として採用してみるといいでしょう。 3.なぜスイングの「軸」が重要なのか? クラブの回転運動の中心になる仮想の線が「軸」だと解説しましたが、なぜスイングにおいて重要と言われるのでしょう。ここでは、スイングの「軸」の重要性について解説していきます。 スイングの「軸」の役割は? スイングの「軸」はヘッド軌道を安定させ、精度の高いショットを打つための大事なポイントになります。 繰り返しになりますが、ゴルフのスイングはクラブの回転運動です。先端にあるヘッドの軌道を一定に保つには、回転の中心にある「軸」が動かないようにキープすることが大切になります。ドライバーなど、長いクラブになるほど、ヘッドに強い遠心力がかかって「軸」がブレやすくなりますし、そのぶん、ミスしたときの曲がりも大きくなりがちです。 あらゆるクラブで安定し軌道でクラブを振るためにも、回転運動の中心である「軸」がブレないように体を使うことがスイング作りのキモになるのです。 前傾姿勢キープがスイングで重要な理由 スイングの「軸」をキープする上で、上体の前傾姿勢が大切になります。なぜなら、クラブはライ角に沿って、斜めの回転運動をするからです。特に地べたにあるボールを打つアイアンやUT、FWは前傾姿勢が崩れて、ヘッドの通る軌道がズレると簡単にダフリやトップになってしまいます。 スイング中の前傾姿勢の変化をできる限り小さくすることで、ヘッドの入りが一定になり、精度の高いショットを打つことが可能になります。 スイング中に「軸」は移動する? スイング中に「軸」は簡単に移動します。ブレやすいと言い換えても良いでしょう。「軸」は実体のある線ではなく、体の中心にできる仮想の線です。例えば、体が左右にスエーした場合は、「軸」も左右にブレてしまいます。実際、アマチュアゴルファーの多くは体を正しく使えず、スイングの「軸」がブレていて、それを感覚的に理解しています。だからこそ、「軸」をキープしようと言うレッスンが心に刺さるのでしょう。 ただし、ボールをより遠くに飛ばすためのテクニックとして、あえて「軸」を左右に動かす方法もあります。いわゆる体重移動と呼ばれるものです。 バックスイングで右に乗るように「軸」を移動し、ダウンからフォローにかけては左に体重を乗せながら、「軸」を左に戻していきます。「軸」を移動させることで、回転運動の円が大きくなりますので、より大きな遠心力をかけることが可能になり、結果、インパクトのパワーを作ることができるのです。 とはいえ、「軸」を動かすことで確実にインパクトは不安定になります。「軸」の意図的な移動は、飛ぶけど曲がるかもしれない諸刃の剣のようなテクニックで、パーシモンなど、クラブの性能が低かった時代によく使われました。 現代では、クラブの性能が飛躍的に上がっていますので、スイングの「軸」は動かさずにキープしようという考えが主流になっています。 4.正しいスイング軸の作り方 では、どうすればスイングの「軸」をキープできるようになるのでしょう。ここでは、正しいスイングの「軸」の作り方について解説していきます。 骨盤が前傾したアドレス姿勢を作る スイングの「軸」を作る上で何より大切になるのは、アドレスの姿勢です。 骨盤が前傾して正しいポジションに入り、背筋も真っすぐなアドレスを作ることができれば、自然にスイング中の体のブレは小さくなります。アマチュアゴルファーが手打ちになったりして、スイングの「軸」がブレるのは、アドレスの姿勢ができていないことが一番の原因になっています。 骨盤を正しいポジションに入れるには、まず体を真っすぐにして直立します。そして、背筋を真っすぐにしたまま、腰の上から上体を前に傾けていきます。ツマ先に体重をかけるように前のめりにしていき、倒れそうになったところで両ヒザを緩めましょう。これだけで骨盤が正しいポジションに入った前傾姿勢を作ることができます。 小さいスイングでボールを打つ スイングの「軸」は大きい振り幅ほど、ブレやすくなります。 正しいアドレス姿勢を作っても、いきなりフルスイングをすると「軸」がブレる可能性が高いので、まずは腰から腰のスイング幅や肩から肩までのハーフショットでボールを打ってみましょう。このとき、下半身から腰、胸、腕と順番に回転させることを意識することが大切です。 骨盤を正しいポジションに置くことで下半身が使いやすくなり、連動して上体が動きやすくなっていますので、今までよりも体を動かす順番が意識しやすくなっているはずです。 この体を動かす順番こそ、スイングの「軸」をキープする最大のキモになります。 プロがよくハーフショットなど、小さいスイングの練習を重視するのは、こういった体を正しい順番で動かすことが意識しやすいからなのです。地道な練習にはなりますが、続けることで確実にスイングの「軸」がキープしやすくなり、スイングの質が大きく向上するはずです。 自分なりの「軸」の意識の仕方を見つける プロゴルファーにインタビューすると、人によって「軸」の意識の仕方が異なります。体の中心を通る垂直な1本の線を意識する人もいれば、左足から右肩に通った斜めの線を意識する人もいますし、線は線でも太い線だと話す人もいます。 これらはどれも正解です。スイングの「軸」とは、あくまでも回転運動の中心で仮想の線になりますが、その状態を作るためにゴルファーが意識すべきことは人によって変わってくるのです。 垂直な線なのか、斜めの線なのか、足元まで通っているのか、上体だけなのか、細いのか、太いのか。意識することで「軸」がブレなくなる「自分だけのイメージ」を見つけることができれば、ショットの精度が一段高まるはずです。 往復素振りで「軸」が意識しやすくなる スイングの「軸」を意識しやすくなる、おすすめのドリルがあります。それは7番アイアンを持って往復素振りをすることです。 まずは7番アイアンを持って正しいアドレスの姿勢を作り、そこから両腕とクラブでL字を作るようにトップ、フォロー、トップ、フォローと往復素振りをしていきます。肩の高さでピタッと止めるには腹筋を締めなければいけませんし、体を左右にブラさずに振るためには背骨を中心とした回転運動をする必要があります。 この素振りを繰り返すことで、今までふわっとしたイメージでしか感じられなかったスイングの「軸」が、より具体的にはっきりと感じられるようになるはずです。 このドリルは、芹澤信雄プロが率いるチーム芹澤において、定番とされているドリルのひとつで、「軸」を安定させたいと考えるゴルファーに、とてもおすすめなものになっています。 5.まとめ ここまでスイングの「軸」について、その正体や正しい動きを身に付けるための方法論について解説してきました。スイングの「軸」はショットを安定させるために絶対不可欠なものです。身に付けることができればスイングのレベルが確実に上がって、ショットの精度も間違いなく向上します。 スコアアップを目指す上でもぜひ身に付けたい技術ですので、この記事を参考に練習に取り組んでみてください。