22年間、2200匹の「路上ネコ」を追い続けた写真家、集大成で500万カットから厳選「心を打つ哀愁」「たくましさ」
実は「猫にナメられている」
それにしても、なぜ路上ネコたちの自然な表情を撮影できるのでしょう。近寄るだけでも難しいのですが。 佐々木「そういう質問を受けるたびに、『まずは望遠レンズで撮って、何日か同じ場所へ通いながら、少しずつ距離を縮めている』と答えています。しかし、誰でもそうやると撮れるわけではないのです。僕はどうも路上ネコたちから下に見られてというか、『うっとうしいけれど害がないヤツ』と思われているようで、そのおかげで彼らのコミュニティに顔パスで入れるんですよ」 路上ネコから下に見られている? 佐々木「はい。だから僕は“猫が寄ってきすぎて撮れない”場合の方が多いんです。勝手に背中に乗っかってきたり、レンズに頭突きをしてきたり、スニーカーやカメラバッグで爪とぎされたり。完全にナメられていますね(苦笑)。でも、寒い季節はひざ掛けがわりになってくれるので助かりますね」
「こんな猫が路上で生きていたんだ」と知ってほしい
22年にわたり、路上ネコたちのストリートスナップを撮り続けてきた佐々木さん。この新刊には、ある想いが込められているそうです。 佐々木「路上ネコは年々、数が減っています。地域猫の多くは去勢手術されており、これからさらに少なくなってゆくでしょう。そのため『自分は今、時代の過渡期を画像で残しているんだな』と考えることもあるんです。猫の寿命は長くて18年。この本に掲載された路上ネコの多くは、もうこの世にはいないでしょう。猫を捨てるのは論外ですし、路上ネコの存在には賛否があるでしょうが、『かつてこんな猫が路上で生きていたんだ』と知ってもらえたら嬉しいです」 佐々木まことさんの写真集『路上ネコ、22の居場所で222匹』は、ふてぶてしい表情をしながら街の片隅で生き抜き、小さな肉球でアスファルトを踏みしめた路上ネコたちの足跡が刻まれています。 ◇ ◇ ▽『路上ネコ、22の居場所で222匹』(幻冬舎) 写真・文/佐々木まこと 企画・プロデュース・編集/石黒謙吾 路上をさすらい撮り続けた22年! 500万カットの集大成です。カワイイだけの猫写真集とは一線を画す、にじみ出るおかしさ、ぐっとくる哀愁。膨大な記録から厳選したバラエティ豊かな路上ネコの数々をご覧ください。定価1,760円(本体1,600円)。 (まいどなニュース特約・吉村 智樹)
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