ギャンブルばかりで借金を作る父。母は宗教に救いを求めた。15歳の頃、離婚を決めた母への手紙が、思わぬ形で見つかって
noteが主催する「創作大賞2023」で幻冬舎賞を受賞した斉藤ナミさん。SNSを中心にコミカルな文体で人気を集めています。“「愛されたい」が私のすべて。自己愛まみれの奮闘記、笑い飛ばしてやってください”という斉藤さんによる、すべてをさらけ出すデビューエッセイ集『褒めてくれてもいいんですよ?』より一部ご紹介します。 【書影】SNS時代の新星・斉藤ナミがすべてをさらけ出すデビューエッセイ集『褒めてくれてもいいんですよ?』 * * * * * * * ◆私と母の関係 私と母の関係は、少し変わっている。 「ナミ。明日って何時頃家にいる?」 「午前中は事務所で仕事してる。午後ならいるよ」 「わかった。野菜たくさんあるから持っていくわ」 そう言って、家にいない午前中にやってきて、私に会わずに玄関に荷物を置いて帰っていく。 母の家はそう近くない。車で30分以上はかかる。せっかくの野菜が炎天下に数時間おかれて、しなしなになってしまっていることもある。私が家にいる時間に来るときは、一旦は部屋にあがるものの、荷物を置いて猫をひとなでし 「じゃあそろそろ行くわ」 と、5分も経たないうちにそそくさと帰ってしまう。いつもそうだし、私も照れ臭くて恥ずかしいので、いざ二人きりでゆっくりお茶……となっても、どんな顔で何を話していいのか、ドキマギしてしまうだろう。 「野菜持ってきてくれてありがとう。子どもたちも喜んでる」 子どもたちが美味しそうに食べている写真を添付してLINEでお礼をする。子どもを挟むと会話もしやすい。
◆友達のような関係ではない 猫とビールと中日ドラゴンズと中森明菜が大好きな母。 中森明菜のことを「明菜はね……」とまるで友人かのように名前で呼び、彼女の登場がいかに衝撃的だったか、その才能がいかに素晴らしいものだったか、その存在が世間の圧力によってどのように潰されてしまったかという一連の話を、今までに何万回も聞かされた。「私にはあの子の気持ちが分かる」と、特別な絆を一方的に感じているようだ。今も、彼女は元気でやっているのかを、友人のような立ち位置でいつも心配している。 中日ドラゴンズについては、毎日の試合はもちろん欠かさず観戦し、各種記事を読み込み、選手全員の毎日の体調まで把握しているようだ。「ヒロト、昨日の疲れ残ってないかな~。大丈夫かな~」と親みたいに想いを寄せている。 母とは、仲が悪いわけではない。くだらないLINEはするし、美味しいものを見つけたら多めに買って家に送ったり、お盆やお正月には子どもを連れて遊びに行ったりもする。しかし、二人でショッピングへ出かけたり、ランチをしたり、料理をしたり、温泉に入ったりはしたことがない。街で、SNSで、友達のような母と娘を見るたびに、そうでない自分たちを想い、少し胸が痛む。 母もそうなんだろうか?
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