【鉄道ひとり旅】八高線と秩父鉄道でめぐる埼玉の2大麺グルメ
八高線で小川町の武蔵野うどんの店へ
食欲の秋が来た。埼玉の2大麺グルメ、武蔵野うどんと秩父そばを味わおうと、東京近郊を走るローカル線に乗って日帰り旅に出た。 レトロな雰囲気いっぱいでタイムスリップしたような和銅黒谷駅(秩父鉄道) 八王子駅から八高線に乗り、高麗川(こまがわ)駅で乗り換える。高麗川駅以北、高崎駅手前の倉賀野(くらがの)駅までが非電化区間なので乗り換えが必要なのだ。キハ110系気動車に乗り込み、ディーゼルエンジンの心地よい振動に身を委ねながら、車窓を眺めていると小川町駅に着いた。駅前の商店街を抜け、30分近く歩き(タクシー5分)、「武蔵野うどんあそび」の暖簾をくぐった。 店主の藤野広己(ひろみ)さんは「自分が食べたいうどんを作る」と十数年前、営んでいた割烹料理店をうどん専門店に鞍替えした。人気の肉汁うどんは、分厚い豚バラ肉と地元豆腐店の油揚げ、深谷ネギがふんだんに入ったつけ汁で食べる。1センチほどの極太うどんのコシの強さと弾力は想像以上だが、昆布とカツオのだしが利いた汁によく絡み、のど越しもいい。 左党は酒蔵も楽しめる。和紙の里として知られる小川町は水が良質で、酒処でもある。駅へ戻る途中にある晴雲(せいうん)酒造に寄った。旧仕込み蔵の1階の資料館で酒造りの道具を見学し、1階の売店で造りたての生酒や純米吟醸を試飲できる。道中飲めるのも鉄道旅のよいところだ。
長瀞で途中下車して紅葉の渓谷を歩く
八高線で寄居(よりい)駅まで北上し、埼玉の羽生(はにゅう)から熊谷、奥秩父の三峰口(みつみねぐち)を結ぶ秩父鉄道に乗り換える。ローカルな味わいのある古い駅が多い路線だ。車窓に波久礼(はぐれ)、樋口、野上とノスタルジックな駅舎が続き、遠く秩父山系の山々が見える。東京近郊なのに十分、旅愁を感じられる。 沿線を代表する景勝地、長瀞(ながとろ)渓谷に近い長瀞駅で下車。隆起した岩が織りなす天然記念物の岩畳を通って、隣の上長瀞駅まで30分ほど歩いた。11月には、対岸の絶壁や岩畳の木々が鮮やかに色付く絶景が広がる。上長瀞駅で再び秩父鉄道に乗ると、すぐに渡る荒川橋梁の上から、渓谷と川下りの和船を眺めた。