富士山「目隠しコンビニ」現在は幕なしに 外国人客は絶えず…日本が秘める“卵サンド”的ポテンシャル
浅草で「サンドウィッチ」をほおばる訪日客
山梨県富士河口湖町のローソンに「目隠し幕」が設置されたのは今年5月のこと。富士山目当ての訪日客の撮影スポットになったことで、私有地への侵入などのトラブルが続出し、地元自治体が取った策だった。日本のインバウンド需要増を象徴するような出来事だが、およそ半年が経った現在はどうなっているのだろうか。消費経済アナリストの渡辺広明氏が現地を訪れると――。 【写真】ウェディングフォトを撮るカップルも…幕が撤去された現在の様子 ほか ***
観光庁の発表によると、訪日外国人消費額は今年1月~9月で5兆8,582億円となり、昨年の通年規模を上回ったという。今年は年間8兆円を達成しそうな勢いだ。 コロナ前であれば、日本におけるインバウンド消費は中国や台湾からの旅行者を中心とする“爆買い”が支えていた。しかし、現在は大きく異なる様相を呈していると、私は感じている。 たとえば10月初旬、朝の浅草を訪れると、ファミリーマートの店先にアジアや欧米からと思しき観光客が数組いるのを目撃した。みな朝食にサンドウィッチを路上で食べているのだ。 彼らが日本のサンドウィッチを好むのには理由がある。2019年に日本でラグビーワールドカップが開催された際、外国人記者が「今大会の優勝チームを選ぶより、コンビニ各社のタマゴサンドはどこが美味しいのかを選ぶほうが難しい」という趣旨のSNS投稿を行い、拡散された。これに、他の記者たちも「ファミマだ」「ローソンだ」「セブンだ」と反応したことで「日本のコンビニのタマゴサンド」はインバウンド観光客に認知されて広まったのである。 今年のお花見の時期には、三色団子が「映える」と、インスタの海外アカウントで拡散され人気になった。日本では当たり前となっている商品の良さを外国人が“発掘”し、それを訪日観光客が体験するという、爆買いとは違った新しいインバウンド消費のスタイルに進化しているのである。 こうした商品が今後も際限なく発掘されていきそうな気もするし、逆に外国人が発掘したものを日本人が“再発見”して消費するという、逆転現象も起きるかもしれない。 行先にも変化が見られる。これまで東京・大阪・京都・福岡・札幌など大都市圏が中心だったインバウンド観光は、地方にも広がりつつある。ニューヨーク・タイムズが発表した「2023年に行くべき52カ所」の1つに、岩手県盛岡市が選ばれたのは象徴的だ(歴史を感じられる建築物などを歩いて回れるというのがその理由だった)。