ヤクザに売られたら愛された!?危険あり笑いありのヤクザと女子高生ラブコメ!『世話焼きマフィアと薄幸少女』をレビュー
家庭環境に恵まれない15歳の少女・桜都は、母親の思わぬ行動でヤクザに売られてしまう。彼女は、どうなってしまうのか。ハラハラドキドキの展開からスタートするのは『世話焼きマフィアと薄幸少女』(久遠アユム/フレックスコミックス)だ。
彼女を引き受けたのは、最恐マフィアのボス・楊昇龍(ヤン シンロン/以後、シン)であった。「今から仕込んで高級娼婦にでもするか」と言いつつ、甲斐甲斐しく世話を焼き、やがて手放せなくなってしまうラブコメディ。付かず離れずな二人から目が離せない。 少女が親に売られた理由は「母親が彼氏に猫をプレゼントするため」だ。シンは、それを不憫に思い、彼女に実の名を捨てさせ〈桜都〉と名付けた。少女を不憫に思っている気持ちを言葉に出せないシンは、少女を預かる口実に「18歳になったら高級娼婦にするために、今から仕込む」と嘯く。実際は高級ブティックで服を買い与えたり、桜都の部屋の家具をまとめて購入したりと、甘やかしている。 「娼婦として売られるために、さまざまなことを教えてもらっている」と信じ込んでいる桜都は、素直で擦れたところがない。劣悪な環境で育ってきているにもかかわらず、何事にも一生懸命な様子にも好感が持てる。 このストーリーの面白いところは、シンも桜都も互いに惹かれているのに、完全に無自覚なところである。そのため、微妙なズレが起きドタバタな展開になる。シンの過保護ぶりも相まって、桜都への無自覚な恋心が物語をコミカルに動かしていくのだ。 独占欲が人一倍強い一方で、強がりな性格のシンと、素直すぎる桜都。危険と笑いが交錯する、異色のラブコメに引き込まれる人は多いはず。二人の今後の関係に注目したい。 文=ネゴト / 森ソタカ