クモの糸から防弾皮膚、牛の糞からファッション、オランダ人「バイオアーティスト」が生み出すイノベーション
一方、アートビオ・ラボラトリーズでは現在、アゾラという水生シダ植物を使った環境対策プロジェクトが進行中だ。アゾラはさまざまな気候環境で育成できる上、成長が非常に速く、高タンパク質を含み、シアノバクテリア(光合成を行う細菌の一種)との共生により、大気中の窒素をアンモニアなどの形で固定することができる。このため、アゾラは肥料に使われているほか、将来宇宙で生育する植物としても研究されている。 一部の種は繁殖によって生態系に深刻な影響を及ぼす侵略的外来種とみなされているが、エサイディ氏によれば、制御された環境で育成し、建築物の壁などに応用すれば、二酸化炭素や窒素を吸収する温暖化対策になり得る。また、高タンパク質の野菜として、代替肉としての役割を果たす可能性もあるという。 同ラボラトリーズではほかにも、下水に含まれる油脂でローソクを作ったり、馬を使ったコーチングでホームレスの社会復帰を助けたり、さまざまな興味深いプロジェクトが進行している。アイントホーフェン市の森の中、1.6エーカー(約6,500平米)に及ぶ自然に囲まれたエサイディ氏のオフィスには、今日も訪問者が絶えない。
取材・文:山本直子/ 編集:岡徳之(Livit)