「緩和ケア」=終末期医療ではない “がん”診断直後から受けるべき理由
余命を意識するのは悪いことではない
「がんに立ち向かうにはどうすべきか?」 これはがん告知を受けた患者やその家族が直面する重大な問題です。そして、悩み抜いた末に「孤独」に陥ることも少なくありません。押川さんは、がんと共存しながら治療を行う方法を勧めています。 「がんは『悪性腫瘍』と呼ばれます。悪性は『命に関わる』、良性は『命に関わらない』を意味します。がんは紫外線や化学物質などの刺激で細胞内の遺伝子情報が破壊されることが原因です。がん細胞は永遠に分裂し続け、悪性腫瘍は分裂する能力を持ちます。がんが大きくなるほど症状は悪化し、命に関わります」(押川さん) 「がんの標準治療は手術での切除ですが、遠隔転移したがん(ステージIV)は手術では治りません。手術ができない場合、がんと共存する治療が望まれます。がんは大きくならなければ症状は悪化しません。がんと共存しながら治療することが推奨されます」(同) 冒頭で紹介した筆者の知人は「余命宣告」を受けていました。しかし、押川さんは余命宣告とは不確かなものだと言います。「余命」は「生存期間中央値」と混同されがちですが、実際にはばらつきがあることが分かっており、「平均」で推し量る意味はありません。「余命宣告の7割は外れる」という論文も存在します。余命宣告は参考程度にとどめ、希望を失わないことが肝要です。 「『余命宣告』を受けても、一日一日を大切に生きることが重要です。家族と濃密な時間を過ごすなど、価値ある毎日を過ごすことで、余命を意識することは決して悪いことではありません。自分一人ではどうにもならないときは、仲間のところに行きましょう。孤独に悩んでいては、どんどん世界が狭まってしまいます」(押川さん) 個人の発想の範囲は狭く、それでは現状から抜け出せません。そんなときは外の世界の人たちに会うことが大切です。例えば、味方になってくれる人として、がんの告知を受けてこれから治療を開始する人や治療中の人など、いわゆる「がんサバイバー」が挙げられます。がんの苦しみを分かち合える存在として、心優しいがんサバイバーがあなたを迎えてくれるはずです。生きる気力を失ってはいけません。
コラムニスト、著述家 尾藤克之