【更年期、田中ウルヴェ京さんの場合(インタビュー後編)】ちゃんとイラつく、ちゃんと落ち込むことも大切です
何もやる気がなかった時期を乗り越え、今は“ハマり期”
心理学的にも、40代後半から60歳までは非常に大切な時期なんだとか。 「女性ホルモンが激減するという体が変化する時期ですが、心理学的にも大切な人生の節目の時期なんです。しっかり過去の自分の棚卸しをしようというか。棚に上げていた自分の課題を下ろして、ちゃんと向き合うことが60代以降の自分ならではの幸せをつくるために必要なことです。 人によって棚に上げていたことが家族関係のことだったり、仕事のことだったり、プライドやコンプレックスの問題とか…いろいろありますよね。それまで見ないようにしていたものを直視して『うわー』っとなって、そして、これからどうする? やれることは何だろう? そういったことを60歳頃までに…ちょうど更年期と重なる時期ですが、考える。とても困難な時期だけれど、このときの自分のつくり方で、60歳以降に本当の意味で人の役に立つ高齢者になっていけるんです。 これ、20代の頃から私が大事にしているエリク・H・エリクソンという発達心理学者の考え方です」 40代前半に子宮頸がん、40代後半に更年期に入ってからは博士号取得のために大きなストレスを抱えていたウルヴェさん。閉経して更年期の後半といえる今は…? 「自分はどうかと言われれば、少し前までは“バーンアウト(燃え尽き症候群)”状態でした。博士号を取ったあと、去年の秋くらいまでは、仕事はしていたんですけどその実、なーんにもやる気がなかったです。 人にはメンタルセッションで、『どんなにやる気がなくても、今やれることをやればいいだけです』なんて偉そうに言ってたくせに、『あー、やる気ない、やる気ない』ってずっとブツブツ言ってました(笑)。最近になってようやく復活したというか。やっと次の人生の目的や目標が頭の中で明確になり始めてきています。そうすると、プライベートにも元気は出てくる。若い頃は全然好きじゃなかったゴルフが急に楽しくなってハマったりしています。明日もコースに出るんですよ」 やる気が復活したことで、ほかにも趣味が増えたのだそう。 「ゴルフ同様、まったく興味がなかった着物にも今夢中です。実家の母や祖母の着物を処分することになり、着物屋さんに持っていき始めたのがきっかけなんですが、古い着物を直してもらったりするうちに、着付け教室にも通うようになりました。着付けができるとさらにハマってしまって。祖母の着物に包まれると、大好きだった祖母の思いに近づけそうな気がするし、ちょっとした機会に着物を着て出かけるのが楽しいんです! もともとこれやりたい、と思うとハマるタイプではありますが、30代40代、54歳まではスポーツ心理学にしかハマってこなかったので。今、人生でいちばん、あれこれハマりやすい年頃なのかもしれません」 家事もウルヴェさん流で楽しんでいるのが印象的だった。 「子どもたちも独立してしまったからやるべき家事は減ったんですが、掃除とか料理とか家事をしながらちょっとしたエクササイズをしています。掃除は瞑想の時間にもなるの! 『らららららら~~♪』って掃除機をかけたり、拭いたりするのは頭をリセットする作業でもあるんです。皿洗いなんかもっといいです、頭のリラックスタイムなんですよ」