上重聡「1週間ぐらい前から水分摂取を調節して…」日テレ時代に担当していた「箱根駅伝」実況の裏話を語る
◆“スポーツ実況”の難しさ
藤木:“スポーツ実況”はやりたいことの1つではありましたか? 上重:そうですね。やっぱり“野球”というところでは少しアドバンテージがあるのかなと思っていましたので、そういうところを活かせればと思っていました。 藤木:実際にアナウンサーになられてから“アナウンサーの大変さ”を感じたのはどんなときですか? 上重:それこそ野球の実況なのですが、(その前から)野球の中継は観ていましたし、野球もしていましたから、正直なところちょっと舐めていた部分があったんです。でも(実際に実況してみると)言葉が全然出てこなくて。 横にいる先輩に「困ったら天気を言え」と言われていたので「雨が降ってきました」って言ったんですけど、(実際は)雲ひとつない晴天だったんですよ(笑)。自分の冷や汗が目の前を通ったのが雨に見えて……そのくらい、最初はまったくダメでした。 藤木:いろいろなスポーツを実況されてきたと思いますが“これは難しかったな”と思うスポーツはありますか? 上重:日本テレビでいうと、やっぱり「箱根駅伝」ですね。中継車もバイクも乗らせていただいたのですが、そもそもスタートからフィニッシュまで一度も(中継車から)下りられないので、トイレにも行けないですし、7~8時間ぐらいずっと乗りながらしゃべっている感じなんです。 藤木:おむつをしながら(実況される)というお話も? 上重:する方もいらっしゃいます。アスリートじゃないですけど、1週間ぐらい前から(本番に向けて)水分摂取の調節をしてなるべくトイレに行かないようにする。ある意味“登板に向けて調整する”みたいなイメージですよね。 藤木:しかも、当日になって(出場選手が)変わったりするじゃないですか。 上重:日本テレビの昔からの伝統で、400人ぐらいの選手一人ひとりに会って、全員にアンケートを取って、それをまとめてから(中継車に)乗り込んでいるんです。まず、それをまとめるのに大体1ヵ月かかります。12月ぐらいから、その作業をずっとやっていますね。 かといって、その資料も本番では1割ぐらいしか出せないんですよ。でも、これが不思議なもので、例えば、自分が会いに行った選手の横につく……みたいな、そういうストーリーが結構起きるんです。 ですから、選手と実際にしゃべったからこそ、アンケートに書かれていないことまで話せたりすることもあるので、やっぱり取材は大事だなというのは改めて思いますね。 藤木:フリーになって、やりたいことや夢みたいなものはありますか? 上重:まさに文字通り“フリー”になったので、今回のラジオの出演も(フリーになってから)初めてですし、そういう“初”というか、今まで出会わなかった仕事にもチャレンジできます。それでいうと、藤木さんの前で言うのも何なのですが“演じる”みたいなことも、オファーがあればやってみたいと思っています。 制限を決めないところがフリーの面白さかなとも思うので、アナウンサーらしい仕事と“アナウンサーなのにこんなこともできるんだ”というような二刀流ができたらいいなと思います。 (TOKYO FM「SPORTS BEAT supported by TOYOTA」2024年5月18日(土)放送より)