ウォーキングで、血圧低下や腎機能改善に。なぜ歩くと血圧が下がるのか?2つのメカニズムを専門家が解説
厚生労働省の「令和4年 国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の1日の歩数の平均値は男性が6465歩、女性が5820歩で、直近10年間で有意に減少したそうです。そのようななか、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也先生は「歩かない生活を送ることは、年をとると歩けなくなることに直結する」と指摘します。そこで今回は、伊賀瀬先生の著書『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』から、いつまでも歩ける人になるための心がけを一部ご紹介します。 【書影】抗加齢医学研究のトップランナーが、一生歩ける人になるための心がけを紹介。伊賀瀬道也『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』 * * * * * * * ◆歩くと血圧が下がるメカニズム 脳や腎機能の働きを改善する ウォーキングをすると、なぜ血圧が下がるのでしょうか。 第1に、現代では大きな問題になっている肥満の改善があります。じつは、肥満は高血圧の大きな危険因子です。 血圧は単純に説明すると、心臓から全身に送り出される血液の量(=心拍出量)と、体のすみずみに行き渡る血液の流れにくさ(=末梢血管抵抗)で決まります。 肥満の人は、標準体重の人とくらべて、全身に栄養を運ぶ血液の量も増えます。そのため、血圧が上がるのです。 高血圧の領域で世界的に有名な医学雑誌「ハイパーテンション」(2003年11月)に発表された、メタアナリシス(複数の研究の結果を統合して分析する統計手法)を用いて研究が行われた報告があります。 それによると、体重がおおむね1キログラム減ると、収縮期血圧が1mmHg減る計算になります。ですから、ウォーキングをして体重が減れば、血圧は下がります。
◆毛細血管に酸素や栄養を行き渡らせる 第2に、ウォーキングなどの有酸素運動をすると、全身の血管が広がり、血圧が下がるのです。 筋肉の振動とともに血管に刺激が伝わり、血管の壁をつくる血管内皮細胞で、血管拡張物質である一酸化窒素(NO)がつくられます。 とくに、有酸素運動をすると、“第2の心臓”といわれるふくらはぎのポンプ作用により、血流がアップします。 そのため、大血管だけでなく、全身の血管の99パーセントを占める毛細血管にも酸素や栄養が運ばれるのです。
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