ウォーキングで、血圧低下や腎機能改善に。なぜ歩くと血圧が下がるのか?2つのメカニズムを専門家が解説
◆歩数の多い人は腎機能が改善する そのメカニズムですが、大血管の場合には、血流の増加によって血管のいちばん内側にある、血液と接する部分の内膜を構成する血管内皮細胞で一酸化窒素(NO)が多くつくられます。 それが、血管の2番目の層である中膜にある血管平滑筋(へいかつきん)の緊張をゆるめることで、血管全体を弾力があってなめらかな状態にすると考えられています。 全身の血管の緊張がとれると、血圧が低下しますから、動脈硬化も改善されます。なかでも、脳と腎臓という二つの重要な臓器には、全身の血液のそれぞれ20パーセントが流れていることから、脳と腎臓にもいい影響をもたらすと考えられます。 脳では、血流の改善によって、脳梗塞の予防になったり、アミロイドβ(ベータ)のような認知症の原因と考えられている老廃物の排泄がうまくいったりすることが考えられます。 腎臓は、よく知られているように、体内の老廃物をこし取って尿として排泄する臓器です。 その中心部にあって、老廃物をこし取る作用(濾過<ろか>)を行う糸球体(しきゅうたい)という毛細血管の塊に、無用な圧力をかけないようにすることで腎臓の負担を減らすと考えられます。
◆歩数と腎機能の関係 医学雑誌「ジャーナル・オブ・カーディオロジー(日本心臓病学会誌)」(2021年8月)に、急性心筋梗塞を発症した73人の男性(平均年齢65歳)について、身体活動レベルと腎機能低下の変化を2年間観察した臨床研究が発表されていました。 それによると、退院後6カ月間の歩数の中央値に基づき、歩数が4719歩未満の群と4719歩以上の群に分けた結果では、歩数の多い群のほうが腎機能が有意に改善していることが明らかになっています。 しっかり歩くと腎臓まで元気になるのです。 ※本稿は、『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
伊賀瀬道也
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