日本卓球のエース張本智和が語った五輪への闘志。東京で経験した不安、パリでは「いつもの自分を見せたい」 妹美和の出場は「ポジティブでしかない」
卓球男子の張本智和(所属・智和企画)は7月26日に開幕するパリ五輪へ静かに闘志を燃やしている。18歳で初出場した2021年の東京五輪では団体銅メダル獲得に貢献した一方、シングルスは4回戦で敗退する悔しさを味わった。東京大会で身をもって経験した五輪の緊張感や、出場3種目でメダルを狙うパリ大会に臨む心構えをインタビューで語った。(共同通信=大島優迪) 【写真】張本兄妹、驚きと喜び 卓球W杯でともにメダル 4月
▽夜中のサーブ練習 東京五輪を控えた2021年3月。ドーハで開催された世界ツアー、スターコンテンダー・ドーハで優勝した直後から異変を感じた。「ラケットを握る感触がおかしくなってしまった」と言う。 「4月くらいから不安や緊張からなのか、夜中に卓球場に行ってサーブ練習する感じだった。練習量を増やすというより、行き過ぎた努力というか、不安だから、やらないとじっとしていられないという緊張感があった。東京で行われるオリンピックは最初で最後だと思うので、やっぱり失敗できないっていう気持ちが強かった」 東京五輪のシングルスは第3シードで臨み、2試合目だった4回戦でダルコ・ヨルギッチ(スロベニア)に屈した。ただ、雪辱を期した団体では無敗の活躍でエースの役目を果たし、日本男子の2大会連続メダルに貢献した。大会後には、初参加した五輪の影響力を実感することになった。 「団体で銅メダルを取って、その後にテレビ局さんに回らせてもらったり、有名な人に会えたり。五輪のたった1、2週間の方が今までの4、5年間よりも見てもらえるんだなと思った」
「プラスでもあるし、マイナスでもあるというか。結果を出せた人にとってはいいけど、もし出せなかったら、それまでの4年の方が頑張ったのになと思って。それだけチャンスもあるし、ピンチでもある。(普段の大会と)対戦相手は変わらないけど、反響はレベルが違うんだなと感じた」 大会直後、拠点とする味の素ナショナルトレーニングセンターに戻った。父の宇さんに銅メダルを見せると、パリ五輪への率直な思いがこみ上げた。 「もちろん(父は)喜んでくれたけど、金メダルだったら、もっと喜んでもらえたかなという気持ちが最初に出てきた。自分も銅メダルを取れてうれしいけど、銀や金の方がうれしかったと確かに思った。今は手元にある銅でしか喜べないけど、3年後はもっと喜ばせたい、1ミリの迷いもない笑顔にさせてあげたいと思った」 ▽環境変化で成長 東京五輪後には環境が変わった。所属していた木下グループと2022年3月末で契約を満了した。中国出身の董崎岷コーチと新たにタッグを組み、パリ五輪に向けて再スタートを切った。高校も卒業し、1人暮らしを始めた。 「五輪が終わった後、やっぱり金メダルを取るには、このままではいけないと思った。五輪が終わって練習に気持ちが入らない日々がちょっと続いていた」