パリ五輪後に食べたいものはチョコレートブラウニー!? オリンピック選手の食事内容を徹底調査!
エネルギー不足に陥ることの危険性
体が燃料不足に陥ると、メダルを逃すだけでは済まない可能性がある。近年は“スポーツにおける相対的エネルギー不足”(RED-S)の危険性に関する認識が高まっているけれど、これはトレーニングで消費するカロリー量が食べ物や飲み物から摂取するカロリー量より多くなる場合に生じる問題。RED-Sは、長期的な健康や運動パフォーマンスだけでなく、エストロゲンの量にも深刻な影響を及ぼして、私たちの生理周期を狂わせることがある。 「トレーニングの量が増えたのに食事内容を変えなかったので、体が燃料不足に陥り、生理が2年も来ませんでした」とアンズリー。 しかも、パフォーマンスに悪影響が出ない限り、この問題は簡単に見過ごされる。 「私は出産前に2度オリンピックに出場しましたが、当時はまだRED-Sのことが知られておらず、話題に上ることもありませんでした」とグローバー。「生理は止まっていても、パフォーマンスに問題はなかったですし、ケガもしていなかったので、いまほど心配しませんでした」 女性アスリートの健康を支援するキャンペーン団体Project Red-SとKyniska Advocacyがまとめた「Female Athlete Health Report(女性アスリートのヘルスレポート)2023」によると、英国のアスリートの3分の1強は、アクティブな人にとっては普通だと思い込み、生理が来ないことを無視している。 これは、スポーツ&運動医学コンサルタントで、英国スポーツ研究所の女性アスリート健康&パフォーマンス部門の臨床指導者を務めるケイト・ハッチングス氏が解決しようとしている問題。 ハッチングス氏は、Red-Sのような問題を念頭に置きながら、毎週のクリニックでさまざまなオリンピックとパラリンピックの選手たちを診察している。彼女いわくRed-Sは、最近まで十分に研究されていなかった。 「Red-Sは日頃のトレーニングに多大な影響を与え、筋力や持久力、代謝などを低下させます。より長期的な視点で見ると、受胎能力や骨の健康にも影響を及ぼします」とハッチング氏。「Red-Sは免疫機能にダメージ影響を与えることも分かっています。また、エネルギー不足のアスリートは呼吸器疾患のリスクが高く、メンタルヘルスや睡眠に問題が生じることも考えられます」 グローバーは東京オリンピック代表選考会のトレーニング中に肋骨(ろっこつ)を疲労骨折したが、その原因も他ならぬエネルギー不足にあった。 骨の代謝が低すぎて、体のバランスが悪くなっていたというグローバーは、「あのケガで本当に目が覚めました」と当時を振り返る。リオ大会後、3児の母になった彼女は、さらに多くのエネルギーを必要といているそうで、「子どもたちの体操教室、散歩や木登りに付き合ってからトレーニングに戻ったりしているので、燃料補給に関しては、いままで以上にしっかりと考えなければなりません」 以前、イギリス版ウィメンズヘルスのカバーを飾ってくれたイングランド女子サッカー代表のアレッシア・ルッソも、本人いわく食べなさすぎが原因で試合中に大ケガをした。当時の彼女は「痩せたい」と思っていたそう。 もちろん、細い=美しいという従来の基準から外れるのは(それも国際的な舞台で)、心理的に難しいこと。実際、ウエイトリフティングという競技は、キャンベルのボディイメージに大きな影響を与えていた。「体重が目標の120kgに達した途端、パニックに陥りました。見た目が明らかに変わりましたし、服のサイズも合わなくなって。脂肪が筋肉になるまでは精神的に参りましたね」。 「自分が健康なのも、パフォーマンスが良好なのも、体重が増えたのは自分にとって良いことなのも頭では分かっていますが、自分の中に葛藤があるのも事実です」と語るキャンベルによると、外見重視の社会は、この内なる葛藤を悪化させる。これにはアンズリーも同感の様子。「ホッケーの短いスカートを履いているからといって、グラビアモデルになりたいわけではありません。私の目標はメダルをとること。私がいつもパフォーマンスという観点から食べ物を見ているのも、負けず嫌いな性格のおかげですね」