パリ五輪後に食べたいものはチョコレートブラウニー!? オリンピック選手の食事内容を徹底調査!
オリンピック村での食事
ローイングで2度金メダルに輝いたヘレン・グローバーは、ロンドンオリンピックでの経験を振り返ってこう語る。「競技や会場は(アスリートごとに)違いますが、オリンピック村の食堂の利用はアスリート全員に共通の体験です。あの場所では誰もが平等。ふと気づくと、バスケットボールやウエイトリフティング、体操の世界的なスーパースターが隣に座っていることもあります」 英国ホッケーのジゼル・アンズリーがリオ五輪で驚いたのは、食事メニューの多さだった。「本当に、ありとあらゆる世界の料理が用意されていたんです」 一方、英国ウエイトリフティングのエミリー・キャンベルは東京オリンピックを振り返り、あの食堂を攻略すること自体が「エクストリームスポーツ」だったと語る。「みんな迷子で、何を食べるか決められずにいましたよ」 遠征先でのキャンベルは、なるべく普段と同じ物を食べようとするけれど、現実は甘くない。オリンピック予選が行われたブルガリアで出された食事も、かなりイマイチだったそう。 「これは、どの遠征でも同じです。ヨーロッパ選手権でも世界選手権でも、食事はホテルが提供する物に限られます。大事なのは、全てをコントロールするのは不可能であることを理解して、限られたオプションに適応し、いろいろな情報に基づいてベストな選択をすることです」 遠征先で食事にこだわりすぎるのは、自分を表彰台から遠ざける行為。「例えば、トレーニングや試合の前に必ずバナナを食べている人が朝食でバナナを食べられないと、それだけで心理的なバランスが崩れてしまうこともあります」とキャンベルは説明する。 オリンピック村の食堂の話に戻ろう。大人気のピザや餃子が、グリーンスムージーやグレインボウルのような栄養価の高い食べ物とは思えない。でも、運動パフォーマンスを高めるために何を食べるかは人それぞれ。私たちと同様、アスリートの体にも多様な生理学的ニーズがあって、そのニーズは競技によって違うのだ。 グローバーにとってもっとも高いハードルは、燃料を十分に補給すること。「私は小柄なタイプなので、長い距離を力いっぱい漕げるだけの体重をキープすることが唯一の優先事項。栄養面で、それ以外のことは特に意識していません。食事制限は全くないので、何でも自由に食べられます」 もちろん、ベースとなっているのは自然食品、野菜、果物、良質なタンパク源と乳製品。でも、彼女のバッグには間食用のチョコレートやスイーツも詰まっている。 “十分に”食べるのは、キャンベルにとっても万年の課題。超ヘビー級(81kg超級)で戦うと決めてからは、できるだけたくさん食べることに苦労した。 「いまよりも高いレベルで競うためには、もう少し体重を増やす必要があると当時のコーチに指摘され、1日の摂取カロリーを4500~5000kcalに増やさなければなりませんでした」とキャンベル。 アンズリーも、フィールドで倒れない強い体をつくるには、もっと食べなければいけないと栄養士に言われたことがある。「自分はすでに法外な量を食べているつもりでしたが、私は178cmで70kgなんだから、162cmで55kgの人よりも多く食べなければいけないと言われました。12日間で8試合という過酷なスケジュールをこなすためには、自分のニーズに耳を傾ける必要があることも知りました」