「税金使うな!産後の豪華な食事に」の声…産むなら医療体制の「総合病院」かサービス充実の「個人病院」か?39歳の初産妻の身に起きたまさかの誤算
何が正しいのか。
出産を終えたばかりの女性が、入院した病院の豪華な食事画像とともに「補助金のお陰で持ち出しが少なく済んだ。タダになればもっといい」という趣旨の内容をSNSに投稿したところ、 この記事の他の画像を見る 多数の「いいね」に混じって、「自分は総合病院で質素な食事だった」「病院選びは医療体制で選ぶべき」「自分の税金をこんなことに使ってくれるな!」など、比較や批判の声が寄せられ炎上状態となり、一時「総合病院」がトレンド入りした。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、この炎上についてこう指摘する。 「一般の方の何気ない投稿が炎上するという『異常事態』となった今回の件。投稿者さんが不本意ながらアカウントを削除するまでに問題は発展してしまったようです。 今回の炎上は、『自分の出産リスクをよく考えて病院選びをすべき』といった医療従事者の意見が発端となったようですが、背景には病院ごとに異なる料金・サービスの質や、妊娠出産に対する手厚い助成、助成の地域格差への不公平感などもあるのかもしれません」 今回は急遽、産院選びを後悔した経験のある方にお話を聞くべく調査。「料理や部屋といったサービス・設備面で産院を選んだが、出産時に激しく後悔した経験がある」という女性に取材を行った。 「『産院選び』って言いますけど、私の住んでいる地方では選ぶというよりも、リスクが低い妊婦は大きい病院に来るなっていうムードが出来上がってますよ」 こう話すのは、39歳で初めての出産をした現在育休中の倉知亜沙美さん(仮名)。 「先輩ママである私の友達が個人の産婦人科クリニックで出産を希望したところ、あなたはハイリスクだから公的病院か総合病院をお勧めします、と言われ、希望していた個人病院での出産が叶いませんでした。世間で言うほど、出産する病院を選べない地域もあると思う」 地方では、総合病院か個人病院かというよりも、公的病院・総合病院で産むのはハイリスク妊婦、そうでない妊婦は個人病院へ、という棲み分けが出来上がっているというのが亜沙美さんの主張である。 「だから、一般的な妊婦は個人病院のサービスの質を比較して産院を選んでいるはずですよ」 サービスの質というと具体的には? 「食事ですよ、食事。それ以外に妊産婦の楽しみってあります?」 産院選びで、食事内容は重要なポイントとなるらしい。公的病院や総合病院の「いかにも病院食」な食事は絶対に避けたかったのだそう。 「あとはお部屋ですよね。正直、うちの辺りの総合病院は老朽化が進んでいたり、個室が少なくてほとんど相部屋だったりで、ひどいんです。しんどいお産のあと、赤の他人と同室とか死んでもイヤでした」 ホテルを選ぶ時のような基準での出産施設選びを批判する声があることについて、亜沙美さんはどう思うのか。 「いやいや、勝手にサービス内容で競い合っているのは病院の方ですよ。今って、出産以外でも大病院は『大した症状じゃない人は、なるべく来てくれるな』というスタンスですよね。 でも個人病院は『患者様』っていってサービスをバンバン打ち出して集客してます。なぜユーザー側がそれを比較して選ぶことに文句言われなくちゃいけないのかなって思いますね」 亜沙美さんが住んでいる地域では、個人の産婦人科病院のサービス情報がかなり流布している。サービスが良く人気のある産院は分娩予約を取るのも一苦労だ。 「妊娠初期は思わぬ不幸もありますけど、それでも妊娠がわかったらすぐに出産したいクリニックに予約を入れなければ、そこで産めません。7週目で問い合わせたのに、すでに予約がいっぱいだったという友達もいましたね」 サービスがいい病院で産みたい場合、妊娠がわかってから分娩予約するまでの時間的余裕はまるでないという。 「人気のない病院は予約が取りやすいかもですが、やっぱり食事や設備がショボかったり、先生が怖いとかキモいという噂があったりする所ばかりなので、絶対にイヤでした」 分娩施設を選ぶ際に「医療体制がしっかりしているかどうか」を基準にすることなど全く頭になかった、と亜沙美さんは言う。しかし、出産当日、亜沙美さんは「総合病院で産めば良かった」と深く悔やむことになる。一体どういうことなのか。【後編はコチラ】へ続く。 PHOTO:Getty Images 取材/文 中小林亜紀