【インタビュー】「高松宮殿下記念世界文化賞」受賞のソフィ・カルが示す「不在」の存在とは?
そのピカソはロートレックの作品にいち早く注目していた。「不在」をテーマにしたソフィ・カルの作品展示と並行して、美術館のキュレーターが独自に考察したロートレック作品の「不在」は、たとえば歌手イヴェット・ギルベールの顔が描かれていないポスター《ディヴァン・ジャポネ》や、彼女のトレードマークだった黒い長手袋だけが描かれた『イヴェット・ギルベール』の表紙などに現れている。持ち物が、不在の人の存在を暗示する。
石版画集『彼女たち』に登場する女性たちは娼館で働く女性のスケッチをもとにしたものだ。が、ここには男性の姿は描かれない。ロートレックはこの石版画集を男性向けに制作した。描かれた女性たちのもとを訪れた男性たちはどこへ行ったのか、あるいはこれからどんな男性がやってくるのか。女性が男性を思う心情もさまざまに想像させる。 そこにあったのに今はない、あるはずなのに見ることができない。そんな「不在」をめぐるさまざまなものが浮かび上がる展覧会だ。
「再開館記念『不在』トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」展
〈三菱一号館美術館〉東京都千代田区丸の内2丁目6-2。2024年11月23日~2025年1月26日。月曜、 年末年始(12月31日と1月1日)休。10時~18時(祝日を除く金曜日と会期最終週平日、第2水曜日は20時まで)。入館は閉館の30分前まで。年末年始の開館時間は美術館サイト、SNS等で要確認。一般 2,300円ほか。
photo_Takuya Neda text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano