【インタビュー】「高松宮殿下記念世界文化賞」受賞のソフィ・カルが示す「不在」の存在とは?
高松宮記念世界文化賞受賞に加え、〈三菱一号館美術館〉での展覧会とめざましい活躍を見せるソフィ・カル。来日した彼女に、展示について聞きました。 【フォトギャラリーを見る】 ソフィ・カルは主に写真とテキストを組み合わせた、詩的かつコンセプチュアルな作品で知られるフランス出身のアーティスト。今年、世界的に顕著な業績をあげた芸術家に贈られる「第35回高松宮殿下記念世界文化賞」の絵画部門を受賞した。
〈三菱一号館美術館〉で開催されている「再開館記念『不在』トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」展は主に同館が所蔵するロートレックの作品と、ソフィ・カルの作品で構成された展覧会。設備メンテナンスのため約1年半にわたって休館していた同館の再開館を記念するものだ。「不在」はソフィ・カルが長年、作品のテーマとしてきたもの。それに合わせて美術館のキュレーターがロートレックの作品におけるさまざまな「不在」を考察している。
ソフィ・カルの展示は6つのパートから構成されている。 「《自伝》は亡くなった両親の『不在』を扱っています。壁の向こうにあって見えない、つまり不在であるオディロン・ルドンの《グラン・ブーケ(大きな花束)》から着想した作品もあります。《あなたには何が見えますか》は盗まれた絵画の『不在』がテーマです。《監禁されたピカソ》はパンデミックで閉館していた〈ピカソ美術館〉で保護のため紙でくるまれていたピカソの作品をモチーフにしました」(ソフィ・カル)
盗まれた絵画とは1990年にボストンの〈イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館〉で起きた盗難事件のことだ。《あなたには何が見えますか》ではからっぽになった額縁を見つめる人々の写真に美術館の学芸員や警備員、来館者に、額縁の中に「何が見えるか」を問いかけたテキストが添えられている。 「必ずしも実際に不在である必要はありません。どのような形であれ、単にそこに存在しない、という事実が重要なのです」