自信を失う“ほめ方”とは...多くの人がやっている、実績だけ見た自己評価
これまでの過程にも目を向ける
【K】それじゃあ、どうやって自分をほめれば......? 【谷本】ぜひ、数字や結果だけでなく、「過程」にも目を向けてみてください。前回、Kさんは、高校生のときに落ちこぼれになったと話してくれましたよね。 【K】はい。まわりは優秀な子だらけで、それこそ人に誇れる数字や結果なんて一つもなかったですね。 【谷本】たしかに、数字や結果だけを見ると、Kさんが言うように、落ちこぼれだったのかもしれませんが、そんなしんどい状況でも学校には通っていたんですよね。 【K】休んだことは一度もなかったです。 【谷本】それって本当にすごいことだと思うんです。 【K】でも、なんとなく休むのがこわかっただけで、強い気持ちがあったわけでも、「負けてたまるか」という根性があったわけでもないんです。 【谷本】なるほど。実際、そうだったのかもしれませんが、大人になって、いろいろな世界を知ったKさんが、今、あらためて高校生のときの自分を振り返ったとき、どんなことを思いますか? 【K】えっ......。まあ、よく3年間も耐えたな、とは思いますが。 【谷本】よくがんばったと思いますよね。そんなふうに、過去を振り返って、数字や結果だけでなく、過程にも目を向けてみると、「自分って案外よくやっているよ」と思えるようなことが、たくさんころがっているんです。 【K】自分しか知らない、小さなことですけど......。 【谷本】小さくていいんです。たとえ一つひとつは小さくても、拾って集めてみると、結構大きなかたまりになりますよ。いきなり自分をほめようとするとハードルが高いかもしれませんが、「過去を振り返るなかで、過程にも目を向けて、自分の小さながんばりを集めてみる」くらいの感覚だとやりやすいかもしれませんね。 【K】つい、「人に自慢できるような実績を出した」とか「いい学校に入れた」といった、外に向けてアピールできることで自分をほめようとしますが、そうじゃなくて、自分のなかにすでにある小さながんばりを見つけることが、そのまま自分をほめることにつながると......? 【谷本】そうです。なかには、かつてのKさんと同じような状況になったときに、学校をやめるという選択をした人もいましたが、そのあと高卒認定試験を受けたり、就職したりするなどして、しっかり自分の人生を歩んでいます。それもまた本当にすごいことですよね。だから、どんな選択をしたとしても、自分をほめてほしいんです。 【K】いきなりは、なかなか難しいですが......。 【谷本】少しずつで大丈夫ですよ。過去を振り返ると、しんどいことを思い出して、落ちこむことがあるかもしれませんが、その近くに、実はたくさんのお宝が眠っているんです。あせらず、ゆっくり掘りおこしていきましょう。 【K】お宝、私にもありますかね......。 【谷本】必ずあります。自分しか知らない小さながんばりを集めていくと、「私って、ダメなところもたくさんあるけど、それらも全部ひっくるめて、まあなんとかやれているよね」と思えるようになります。自分のことをいとおしく感じて、じわーっとあたたかい気持ちになりますよ。