「それが中国流のやり方だ」北極圏でひそかに進む「軍民両用」研究の実態...ロシアとの接近、核持ち込みの懸念も
警戒されるロシアとの協力
それでもアメリカはこの領域で後れを取っている。砕氷船は3隻しか保有しておらず、そのうち1隻は修繕中だ。これに対して中国は、6月に3隻目となる砕氷船「極地」の進水を発表し、来年には4隻目が完成するという。ロシアは数十隻の砕氷船を保有し、一部は原子力船だ。 ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシアと中国の接近が目につくようになったが、それが北極圏にも及ぶようになることを、アメリカや同盟国は懸念している。 アラスカ大学フェアバンクス校北極圏安全保障・レジリエンスセンター(CASR)のトロイ・ブファード所長は、中国は圧力を強めており、緊急に対策を講じる必要があると語る。「今秋の米大統領選後も変わらない長期的なビジョンを持って、包括的で大規模な国家戦略を緊急に立案するべきだ」 米国防総省は7月、最新の北極圏戦略を発表し、中国に対抗して北極圏での軍事的プレゼンスと情報収集能力、同盟国との協力を強化する必要性を訴えた。 これについて中国外務省の毛寧(マオ・ニン)副報道局長は、米国防総省は中国の役割(毛に言わせれば「ウィンウィンと持続可能性」に基づく)をゆがめていると批判した。 中国とロシアはスバールバルでも協力する可能性がある。ロシア政府高官は昨年、かつて炭鉱の町として栄えたが現在はゴーストタウンとなっているピラミーデンに、BRICS5カ国の共同研究センターを設置することを提案した。 ニーオルスンから100キロほど北にあるこの町は、かつてソ連領だったことがある。 中国はこの計画に参加するのか。PRICは本誌の質問に回答していない。「自分たちの手の内を見せるつもりはないのだろう」と、ノルウェー北極大学のランテインは苦々しげに語った。
ディディ・キルステン・タトロウ(本誌国際問題・調査報道担当)