立ち通し「MR」をなくせ! 大の大人を廊下に立たせて平気な病院のメンタリティーは非常識
コロナ禍が去って復活
さて、ようやく本題なのですが、コロナ禍でなくなり、最近復活してきたものの一つに、MRさんたちが医局の廊下で待つ姿があります。あれ、僕、大嫌いなんです。 アポイントをとったMRさんが医師との面会を待つ間、廊下で立って待っています。その間、手持ち無沙汰でやることもなく、ぼーっと複数の専門職が待っていなければならない。なんという時間の無駄遣いでしょう。最近は、スマホやタブレットで仕事をするMRも見かけますが、それだってデスクで座ってやったほうが作業効率はよいでしょう。そもそも夏は冷房がなく、冬は暖房のない廊下で大の大人が立たされている。しかも、多くは背広やネクタイの着用を(暗黙のうちに)強いられているのです。ひどいと思いませんか。 僕はこういうのが嫌なので、MRさんとの面会はできるだけリモートを希望しています。これならお互いの時間を邪魔することなく、医師が他の仕事をしていたら、その間、MRさんも自室で仕事ができます。対面の面会では、もし早めにやってきたのであれば時間を繰り上げてすぐに面会を持ちます。待ち時間が無駄だからです。拙著「タイムマネジメントが病院を変える―医療現場における働き方改革」(中外医学社)でも書きましたが、日本の労働時間で特に諸外国よりも多い無駄時間が「待ち時間」なのです。 もし、すぐに面会を持てないような状況なら、部屋に入ってもらって座ってお待ちいただきます。とにかく、大の大人を廊下に立たせて平気な病院のメンタリティーが非常識なのです。 出入りの営業職を廊下で待たせている業界は他にも多々あるとは思いますが、成熟した大人の社会では「非常識」だ、と繰り返し主張したいですね。
「医師の働き方改革」 絵に描いた餅に?
そもそも、医薬品の勉強は人に教えてもらわなくても、たいていは自分でできます。教科書を読み、論文を読み、ネットで添付文書やその他の資料を読めば薬の使い方は分かります。他の薬との区別もできます(MRさんは他企業の薬については教えてくれません)。 僕は専門内であっても外であっても「薬の説明会」を製薬企業に開いてもらったことがありません。実習に来る医学生や研修医たちは「感染症内科を回っているときは豪華な弁当が食べられなくて残念」って思う人もいるようですが、「医者になったら製薬企業からただで豪華弁当をおごってもらえる」みたいなエートス(慣習)を作ってしまうこと自体が大問題なのです。この状況を放置している医学教育関係者たちは全員猛省していただきたい。 もちろん、MRさんに助けてもらうことは多々あります。例えば、医薬品の副作用が発生したときは一報を入れたりします。海外と日本で薬の投与量や使い方が異なるときは、どういう経緯でそうなったのか、「裏の事情」を説明してもらったりもします。納得できる説明と、そうでもない説明のときはありますが……。いずれにしても、本や論文ではわからない情報を持っているのが専門職なので、やはりMRさんは貴重な存在なのです。 しかし、本や論文を読めば分かるようなことをMRさんに説明させるのは、そもそもプロとして失格だし、MRさんにも失礼だと思っています。 まずは廊下で立っているMRさんをゼロにしましょう。これ、私が勤務する神戸大学病院でも何度も主張しているのです。一時的に減るのですが、ほとぼりが冷めるとまた増え出します。困ったものです。 他人の時間を大切にできない人間は、自分の時間も上手に使えません。「医師の働き方改革」も絵に描いた餅になること、必定なのです。