菊地凛子×磯村勇斗×岡野真紀子が、映像界の課題を語り合う。「ウーマン・イン・モーション」レポ
男性のインティマシーコーディネーターがいてもいい
立田:インティマシーコーディネーターについても、ぜひこの場で教えてもらえますか。 岡野:例えばラブシーンで、もちろんラブシーンにかかわらず、少しでも不安を感じられるようなシーンがあった場合に、監督と俳優さんの間に入ってもらい、お互いがストレスのない現場をつくるという立場の方です。なので、台本を読んでいただいて、インティマシーコーディネーターさんに「このシーンは私行きますね」など、そういったコミュニケーションをとらせてもらってます。 立田:岡野さんはインティマシーコーディネーターを入れる・入れないの判断はどうされているんですか? 岡野:私はほとんどの作品でインティマシーコーディネーターさんに台本を読んでいただくんですよ。それは私がインティマシーだと思わなくても、俳優さんは思うかもしれないので、そういったところもアドバイスをいただきたくて。Netflixに入って、相談しなかった作品はひとつもないですね。 立田:例えばキスシーンやセックスシーンにはインティマシーコーディネーターが入るのはわかりますが、そのほかはどんなシーンに入るのでしょうか? 岡野:例えば温泉に行って、俳優さんが別々に何かものを考えるシーンみたいなものもあります。私はたぶんインティマシーだとは感じなかったと思うのですが、でも「肩を出して、お風呂に入るシーンを撮るということを俳優さんがどう思ってらっしゃるか聞きましょう」というかたちで、インティマシーコーディネーターさんが入ってくれます。 立田:菊地さん、磯村さん、インティマシーコーディネーターが入る現場と入らない現場では、どう違いますか? 菊地:それはもう、絶対にいてくださったほうがやりやすいです。やっぱり肌が出る、近づくということって、演じている役かもしれないけど、実際やるのは自分自身なので。そういう意味では、相手を守るためでもあるし、自分を守るためでもあるし、クルーを守るためでもある。 そういう立場の人が「大丈夫ですか?」って聞いてくれるということは、すごく心が軽くなるというか。根性でいけます、ということでは絶対にないので、すごくデリケートなことをきちんとデリケートなこととして捉える人がいることはすごく大きいです。 磯村:僕も同じですね。インティマシーコーディネーターがいないときにインティマシーなシーンをやると、自分は「大丈夫、やりますよ」ってやるんですけど、どこか傷ついているような部分もあったりして。 できてはいるんですけど、裸のいまの瞬間、タオルも何もかかっていない――「側から見て、絶対おかしいよねこのシーン」って思うときも、やっぱりあったんですよね。カッターの薄いものでピッとやられたように傷ついたこともあって。インティマシーコーディネーターを入れていただくと、不安がどんどん減っていくというか、本当に細かいところまで全部寄り添ってお話ししてくれるので、存在の意味っていうのがよくわかりました。 いま日本だと女性の方しかいらっしゃらないんですが、男性のインティマシーコーディネーターさんがいてもいいなと思っています。女性同士だから話せることもあるように、男性だから打ち解けて話せるということもあるので、男性専門の方がいてもいい。そういった方が現場に関わることで、役者さんやスタッフさんのインティマシーシーンへの理解度が深まって、監督とのディスカッションももっとスムーズにいくんじゃないかなとは、何度か考えたことがあります。