菊地凛子×磯村勇斗×岡野真紀子が、映像界の課題を語り合う。「ウーマン・イン・モーション」レポ
Netflixが導入している「リスペクトトレーニング」とは?
立田:配信プラットフォームの台頭により、業界の環境が大きく変化しているように私も感じます。岡野さんが所属しているNetflixは、例えばインティマシー・コーディネーターを先駆けて導入するなど、ハラスメント問題に対する制度化がすごく早かったと思います。なかでも、「リスペクトトレーニング」について教えてもらえますか。 岡野:スタッフ、キャストの立場関係なく、全員に受けていただくものです。それぞれの立場、背景も含めて、お互いがプロとしてリスペクトを持って、現場でクリエイティブに集中できる環境をつくりましょうということをモットーに、何がハラスメントになるのかとか、何に人は傷つくのか、といったことをあためて話し合う講習です。 現場って予期せぬことが起こるし、危険だってあるし、イライラすることも焦ることもあるんですね。以前、降雪でお弁当の到着が遅れて、スタッフがイライラし始めたとき、「リスペクト」って言ったスタッフがいたんです。そうすると「そうだよね、雪だもんね」「いまの発言リスペクトがなかったね」って雰囲気が変わったことがありました。 立田:実際に初めて受けたときはどうでしたか? 磯村:実際見ると、すごくいい取り組みだなと思いましたね。共通意識を持てるので、先ほど岡野さんが言ったように「リスペクト」の一言で場が落ち着く、といいますか。 菊地:自分だけが見ていることだけではないというか、具体的な内容もあって、例えば「こういうことを言うと少なからず誰かが傷つくんだ」という学びがありました。そのときに「私はこんなことを知らなかったのか」って、自分がまずショックを受けるというか、気付かされるというか。それをクルーの皆さんとシェアしたうえで現場に挑むっていうのは、「お互い尊重しようね」っていう流れになる。そういう意味で、すごく大事な取り組みであると感じました。 立田:菊地さんは海外でもお仕事をされることが多いと思いますが、それぞれの現場でリスペクトトレーニングがあるんでしょうか? 菊地:いえ、規模によってあったりなかったりですね。 ただ、声を上げるということがすごく大事なんでしょうけれど、なかなか声が上がらないっていうことも同時にあるんじゃないかと思っていて。ちょっと違和感があるとき、苦しいときやざわついたとき、どうしたらいいか、何か矢印があると働きやすくなるのかなと思ったりするんです。