コインチェック、復活上場「運がよかった」 ビットコイン10万ドル超え
「国内2社でいい」
マネックスGは国外のM&Aだけでなく、コインチェックG上場によるナスダック株の活用先として意欲を示すのが国内仮想通貨交換業者の再編だ。 「日本では『ドミナント(シェア拡大)作戦』を進め、公正取引委員会に止められるまで買収し、大きくなる。ビットフライヤー以外、我々が押さえてしまったっていいと思う。(国内の仮想通貨交換業者は)2社でいいんじゃないか」。マネックスGの松本会長は鼻息が荒い。 ビットコインの10万ドル突破に業界がわく中、日本では、仮想通貨交換業者の再編機運が高まっている。 仮想通貨交換業者のDMMビットコイン(東京・中央)は12月2日、顧客の預かり資産を金融大手のSBIグループ傘下のSBI VCトレードへ移管し、25年3月ごろに廃業すると発表した。DMMビットコインは、24年5月に当時の価値で482億円相当のビットコイン不正流出事件を起こした。発覚直後から、新規口座開設や現物取引の買い注文などのサービスを停止していた。 業界関係者によるとDMMビットコインは、2カ月ほど前から預かり資産の移管を、複数の同業他社へ打診していたとされる。譲渡額は非公表だが、30~50億円程度とみられている。SBI VCトレードの近藤智彦社長は、「DMMビットコインが他社に預かり資産を移管した方がお客様の利便性回復が一番早いと判断し、当社にお声がけをいただいた」と話す。 SBI VCトレードとDMMビットコインは同じ仮想通貨交換業者で、提供しているサービスも似ている。両社とも第一種金融商品取引業として登録し、少額の元手で多額の仮想通貨の取引ができる「レバレッジ取引」サービスを提供している。SBI VCトレードは取り扱う仮想通貨を14銘柄追加し、DMMビットコインで取引していた仮想通貨をすべて取引できる状態にする。 DMMを吸収することで、仮想通貨業界においてSBIは存在感をより強めることになる。24年9月末時点でSBIが持つ顧客口座数は、SBIVCトレードと、23年に買収したビットポイントジャパンの合計で95万。DMMがもつ45万口座と合計すると、単純計算で来春の顧客口座数は140万になる。 SBI VCトレードによるDMMビットコインの吸収によって、国内仮想通貨業界は4️強時代へと突入する。仮想通貨の口座は国内で1100万口座ほどといわれる。4強の一角を占めるビットフライヤーは顧客口座数を非開示としているが、顧客預かり資産は1兆円を突破し、業界最高額みられる。「200万口座クラスが3社あって、うち(SBIVCトレード単体)も増加している。下位で伸び悩んでいるところもいくつかあるので、さらなる再編はもしかしたら出てくるかもしれない」(近藤氏)。 近藤氏の指摘通り、業界再編への風は強く吹いている。背景には仮想通貨業界の参入障壁が高くなり、新規参入が滞っていることがある。金融庁によると、24年10月末時点の仮想通貨交換業者の登録数は29社に上るが、22年6⽉のメルコインの登録を最後に、新規事業者による登録はない。登録審査を行う金融庁が、過去の事件を受けて審査を厳格化したことが原因と考えられる。国内では18年のコインチェックの流出事件が業界に大きな衝撃を与えた。「コインチェック事件を転機に当局のルールが厳格化した」(大手仮想通貨幹部)。 度重なる不祥事を受けた規制強化により運用コストが高くなり、既存業者も厳しい立場におかれている。顧客の資産を守るためのシステム関連のコストは増し、ビットコインの価格上昇で流出した際の補償リスクも高まり、投資やリスクに耐えうる企業規模がない小規模事業者は徐々に苦しくなっていく。ビットコインの史上最高値に合わせて大手事業者は大規模な広告を展開する中で、優勝劣敗は今後一層加速するとみられる。 国内では仮想通貨ETFの承認に向けた動きもあり、銀行や証券会社など大手金融機関も再編に絡む可能性もある。ナスダック株という「虎の子」を得たマネックスGによって、さらなる業界再編へ号砲が鳴る。
鷲尾 龍一、佐々木 大智