コインチェック、復活上場「運がよかった」 ビットコイン10万ドル超え
「暗号通貨、トークン経済、(次世代インターネットの)ウェブ3、ブロックチェーンはもはやアイデア止まりではない。企業の成長や金融の未来に力を与える現実のツールだ」 【関連画像】マネックスGの松本会長は米ニューヨークの投資銀行で働いた経験を持つ。「(自分の原点は)ニューヨークにある。達成感はあるが、これからが大変だ」と語る(米ニューヨークのナスダック証券取引所の前で) 12月11日朝、米証券取引所ナスダックで、マネックスグループの松本大会長は高らかに宣言した。子会社の暗号資産(仮想通貨)交換業者コインチェックグループがナスダック上場を果たした。日本の同業では、初めての米国上場となる。 マネックスGは2018年、当時の価値で約580億円の仮想通貨の流出事件を起こしたコインチェックを約36億円で買収。経営を立て直し、22年にナスダック上場を目指すと発表していた。同年中の実現を計画していたが、手続きに想定以上の時間がかかり、発表から2年超を経てようやくコインチェックの上場にこぎ着けた。 この遅れは結果的に「運がよかった」(松本会長)。12月5日に仮想通貨ビットコインは史上初めて1ビットコイン=10万ドルを超えた。「ビットコイン大国」を掲げたトランプ氏が11月の大統領選挙で勝利すると、ビットコインは3万ドル超も価格が上昇。さらに仮想通貨交換業者米大手を提訴するなど厳しい姿勢を示してきた米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長の後任として、仮想通貨推進派のポール・アトキンス氏を指名すると、ビットコイン相場は10万ドルの大台を突破した。トランプ氏は選挙期間中、米国内の仮想通貨のマイニング(採掘)の振興や政府がビットコインを戦略的に備蓄する方針も示してきた。松本会長は「慎重だった米国から、新しいテクノロジーを社会や国で使っていこうという姿勢がみられる」と話す。 ●ナスダック株は人も企業も引き付ける なぜマネックスGは、コインチェックGの上場先として日本ではなく米国を選んだのか。松本会長は「ナスダックの上場株は買収通貨として最も効果的だ」と話す。上場時のコインチェックGの時価総額約17億4000万ドル(約2700億円)に対し、マネックスGの上場に伴う調達額は3100万ドル(約47億円)と小さい。マネックスGがコインチェックG株の約8割を保有し続けているからだ。 ナスダック株は知名度と流動性が高く、株式交換など株式を対価とした企業買収に活用しやすい。世界の優秀な技術者や経営者を採用するための株式報酬としても魅力的だ。コインチェックGが成長すれば、株の力も高まる。マネックスGは、世界で最も魅力的な金融資産の1つであるナスダック株のブランド力を最大限生かす狙いだ。 ビットコインは一部の好事家が保有した時代から、機関投資家や政府も注目する「オルタナティブ(代替)資産」になった。時価総額は銀を超え、金の10分の1に迫る。また米SECが24年1月に現物ビットコインの上場投資信託(ETF)を承認し、米資産運用大手ブラックロックが手掛ける「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)」に多額の資金が流入するなど、大手金融機関の参入で個人投資家からもビットコインに大きな注目が集まっている。ビットコインが象徴する金融資産的な価値だけでなく、インターネットの次のインフラと目される「ウェブ3」や、トークン経済圏を巡る競争は激しさを増す。こうした状況を生き残るには、世界に散らばる先進的なスタートアップや技術者を取り込む必要がある。 松本会長は、ナスダックに上場するブロックチェーン関連企業は、世界最大の交換業者米コインベース・グローバルと、コインチェックGの2社だと誇りつつも、米政権交代を受けて様々な企業が上場準備を進めていると指摘。「我々が、ナスダック株を買収通貨として活用できるアドバンテージ期間は短い。この1年の間に成長戦略を実施する」と語った。