ほぼ「五公五民」の国民負担率は本当に高いのか、OECD加盟国には「負担率86.8%」という国もある
財務省のホームページをみると、2024(令和6)年2月9日付の公表で「令和6年度の国民負担率を公表します」というタイトルの記事があります。 これを読むと、「租税負担率と社会保障負担率を合計した国民負担率について、令和6年度の見通しを推計しましたので、公表します」という文章があります。 そして次のように、3年分の最新の国民負担率が記載されています。 ・2024(令和6)年度 45.1%(見通し) ・2023(令和5)年度 46.1%(実績見込み)
・2022(令和4)年度 48.4%(実績) 出典:財務省HP「令和6年度の国民負担率を公表します」参照 50%近い負担を国民がしているとは、「けっこうな負担をしているのだな」と思われたかもしれません。財務省ホームページには、続けて、「国民負担に財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は、50.9%となる見通しです」という記述もあります。 税金と社会保険料の負担を合わせた「国民負担」は明確な支払いをともなう負担ですが、国の1年の収入は税金だけでまかなわれているものではありません。
それは「国債」といって、国が借金をしているからです。こうした借金をして将来返さなければならない部分の「収入」は、返す必要がない税金と違って、国の財政にとっては「赤字」部分になります。 この赤字部分としての負担も潜在的にはあるとしてかけ合わせたものが、この数値になります。 ■フランスの「国民負担率」は、なんと68.0% 国民負担率について、財務省のホームページには詳細なデータを示した資料も掲載されています。これによれば、国民負担は「国税」と「地方税」と「社会保障負担」を合計して計算されています。そして、その推移をみると、次のグラフのように、年々上昇していることもわかります。
※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください では、諸外国ではどうなのでしょうか。これも財務省ホームページに、続けてデータがあります。次のグラフを参照してください。 このグラフによると、68.0%もあるフランスよりはまだ低く、一方でいまでも33.9%しかないアメリカよりは高い国民負担がある。これが日本の現状であることがわかります。 もっともOECD加盟36カ国のデータによれば、ルクセンブルクのような86.8%にも上る負担率のある国も存在します。
このように諸外国との比較をすることで、客観的にみて日本の負担率は高いのか低いのかがわかります。 といっても、それぞれの国ごとに社会のあり方や文化や歴史も違えば、社会基盤となっている法制度にも違うところがあります。それぞれの国ごとに、抱える問題にも違いがあります。 単純比較をしてよいかの議論をすることは、むずかしいのです。 ただし、少子高齢化が加速する日本のなかでみたときに、国民負担率が上がり続けていることは、厳然とした事実です。
木山 泰嗣 :青山学院大学法学部教授(税法)