「キリスト教系大学」の歴史と学び どんな必修科目がある?
プロテスタント系の有名大学
プロテスタント系を見てみよう。16世紀、ドイツ人牧師、マルチン・ルターは、ローマ・カトリック教会のあり方(信仰の儀式化、教義の形骸化、組織の腐敗など)を批判して宗教改革をすすめた。「抗議する」「告白する」などの意味合いを持つ、プロテスタントの誕生である。プロテスタント系からは多くの教派が続々と登場し、明治維新以降の日本にも広がっていく。 宗教改革によって、18世紀のイギリスにメソジスト教会が生まれた。規則正しい生活方法=メソッドを推奨する、から名付けられた。1870年代、欧米のメソジスト教会の宣教師が来日する。1874年、アメリカ・メソジスト監督教会は青山学院を設立した。青山学院大のルーツである。 2022年、青山学院大はキリスト教系大学としての誇り、責任を示した。同年、安倍晋三元首相の襲撃事件に関連し、世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)が過去に引き起こしたトラブルが問題になった。これについて、大学は「危険な宗教集団(カルト集団)」が「通常の市民生活を破壊し、様々な社会問題を引き起こす」と強く非難し、「例えば、『統一協会(原理運動)』や『摂理』などと呼ばれるものにはその傾向が強く、本学内でも勧誘活動をしているという疑念が報告されています」と警鐘を鳴らした。 青山学院大はキリスト教を名乗る「カルト集団」を許せなかったようだ。こう説いている。「カルト集団はマインド・コントロールを組織的かつ巧妙に駆使して、学生としての貴重な時間を奪い、経済的・肉体的に大きな負担をかけ、大切な学生生活を台無しにしてしまいます。これらのカルト集団は、真の人格形成を大切にする本学の建学の精神である福音的・聖書的キリスト信仰とは全くの別ものです」(以上、カッコ内引用はすべて青山学院大学ウェブサイト)。ミッション系大学の矜持ともいえる、骨太な姿勢である。
新JAL社長の系列校も
話をアメリカ・メソジスト監督教会に戻そう。1879年、同教会は長崎に活水女学校を開校した。校名の由来は、聖書にある「わたしが与える水を飲む者は決して渇かない。わたしが与える水はその人の内で泉となり、永遠の命に至る水がわき出る」からで、「活ける水」はキリストの象徴という考えによる。最近、活水という校名がクローズアップされた。2024年4月、日本航空の社長に就任した鳥取三津子さんは活水女子短期大出身である。同短期大は2003年で学生募集停止となり、活水女子大に引き継がれている。 アメリカ・メソジスト監督教会は南北戦争で北部、南部に分かれる。1889年、アメリカ南メソジスト監督教会の宣教師が関西学院を設立した。ここから関西学院大(兵庫)が誕生する。この頃のミッションスクールの多くは英和学校と名付けられたが、「学院」と付けた。学校名に「学院」が付くさきがけとなる。カナダ・メソジスト監督教会も精力的に動いた。1884年に東洋英和女学校、現在の東洋英和女学院大(神奈川)のルーツ校をつくった。なお、アメリカでは19世紀初頭に外国伝道組織として教派を超えた「アメリカン・ボード」が創立された。奴隷制度への反対、南北戦争後に南部で黒人のための大学設立などを行っている。 1875年、アメリカン・ボードの宣教師だった新島襄が同志社を設立した。いまの同志社大(京都)のルーツだ。校名の由来は、「志を同じくする者が集まって創る結社」である。2023年、同志社大は司法試験合格者数29人を数えた。合格率33.3%。これはいずれも宗教系大学のなかでもっとも多く、高い数字である。日本でもっとも法曹に近いキリスト教系大学だ。