「これだけの円安下で海外に住んでいるととくに感じる」 アメリカ暮らしで感じた日本との金銭感覚の違いとは
デジタルの進化やグローバル化により、日本人のお金に対する価値観にも変化が起こっています。妻の海外赴任に伴い、アメリカ・ニューヨークで駐在夫、いわゆる「駐夫(ちゅうおっと)」になった編集者のユキさん。この連載では「駐夫」としての現地での生活や、海外から見た日本の姿を紹介します。第17回は、投資についてです。 【写真】ニューヨークで目撃した日本では考えられない光景 実際の様子 ◇ ◇ ◇
海外に居住すると証券口座は凍結に
貯金から投資へというかけ声のもとに、2024年1月1日から新NISAも開始され、お金に対する関心が高まってきています。 その新NISAなのですが、駐在している間は、口座を開設することができません。居住が海外になると、日本の証券会社の口座は凍結されてしまうのです。当時持っていた旧NISA株も一般株になり、株式の売却はできるものの、新たに購入することはできません。なので、こちらに来て以来、証券口座の株は放置していました。 さて、渡米したのが2022年12月なのですが、そこからの日経平均株価の値動きを見ていきます。 出国前の2022年12月1日の終値が2万8266円。それから株価は高騰し、2024年7月11日、日経平均株価は終値として、史上最高値となる4万2000円台をつけます。 その後、一転して大暴落。8月5日は前日比4451円安の3万1458円(終値)と、過去最大の下落幅を記録しました。現在は、3万9500円とまた持ち直してきています(2024年11月8日終値)。 ジェットコースターのような激しい値動きをしているのですが、出国したときから考えると、株価がかなり上がっています。これは、ただただタイミングが良かったというだけでしょう。 もちろん、本帰国までにも株価は変動するのですが、下手に売買できないことで、あまり心を乱されずに済んでいることが一番良かったのではないかと思います。
お金の専門家なんていない!?
さて、日本では、2020年4月から子どもの金融教育が始まりました。アメリカでは一般家庭における貯金に対する投資の比率が高く、その分、日本よりも金融教育が活発です。 投資よりも、貯金のほうがリスクが少ないと主張する人もいますが、為替が変動するという考え方が抜けているように思います。これだけの円安下で海外に住んでいるととくに感じるのですが、貯金をしていても円の価値自体が下がってしまえば、資産価値は目減りします。 お金について、正解はないのかもしれませんが、少なくとも自分が納得できるように考えることは、大事なのではないでしょうか。 お金の考え方について書かれた本は数多く刊行されており、自分もいくつか目を通しました。 そのなかでも興味深く読んだのが、モーガン・ハウセル著の「The Psychology of Money」(邦題:サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット)という書籍。お金に関するマインドをテーマにしており、世界的なベストセラーになっています。 その冒頭に書かれた投資についてのエピソードで、印象深いものがあります。 ある清掃員が死後に800万ドルもの資産を残せた一方で、ハーバード大学を卒業し、大手金融機関でキャリアを積んだ男が投資に失敗し、破産して無一文になったというもの。 なぜこのようなことが起こるのでしょうか。 大学の医学部を卒業した医者と、医学を学んだことのない素人のどちらがうまく外科手術ができるかといわれれば、間違いなく医者でしょう。当然のことですが、専門知識のない人間に手術をすることはできません。 しかし、ことお金に関する世界は、専門家が素人よりもうまくお金を運用できるとは限らないということです。 こちらは日本語訳も刊行されていますので、ぜひとも読んでみてほしい一冊です。お金への向き合い方を考えさせられる話が詰まっています。
ユキ