幅允孝さん、『ONE PIECE』はアートですか?
『「ONE PIECE ONLY」展』を企画した岡本正史と『ONE PIECE』をこよなく愛する幅允孝が語り合う。 【フォトギャラリーを見る】 誰もが知るマンガを主題に、「誰も見たことがない」光景に出会える展覧会が開催中だ。コミックス発行部数が5億1000万部を超え、単一作家によるコミックシリーズとして、世界最多発行作品のギネス記録を持つ『ONE PIECE』。広く、長く、深く愛される作品がどう作られるのかを体感させる『「ONE PIECE ONLY」展』を、ブックディレクター幅允孝が訪ねた。 「コミックスの全ページをこんな形で見れるとは!」と、140m続く壁面にまず圧倒される。 「これね、コミックスのページを一枚ずつ手で貼ってるんですよ」と話すのは、〈PLAY! MUSEUM〉と協働してこの展覧会の構成とキュレーションを手がける岡本正史。 「連載1000話×コミックス100巻を記念して、『ONE PIECE』がどうやって作られているのかをきちんと記録しようと、プロジェクトが始動しました」(岡本)
尾田栄一郎がコマを割り、構図やセリフも配した鉛筆描きのネームと、黒々と力強いペン入れが施された原画は、第1000話の17枚をセットで展示。執筆から製版、印刷、造本までのプロセスを、樹脂版や校正紙などで魅せる。 「ジャンプ本誌は、今も活版輪転印刷で刷られていますが、製版フィルムと樹脂版はデータから直接刷版を作るCTPに、文字も写植からデジタルに置き換わっています。1970年代頃まで主流だった亜鉛版や金属活字の技術も見てもらおうと、改めて版を作って展示しています」(岡本) 「かつての技術にも光を当て、マンガ印刷の歴史を見せてくれるんですね。宝箱のような什器に収められているのが素敵です」(幅)
会場には「集英社マンガアートヘリテージ」のアートプリントも。 「モノクロームの物語表現を最も美しく、強く見せるには? と考えて、1969年のハイデルベルグ社製の印刷機など2台の活版平台印刷機で刷ったものと、コロタイプ印刷、インクジェットプリントのシリーズもあります」(岡本) 「目に飛び込んでくるような物としての強さを感じます。文化財レベルの技術も間近に見れて、印刷物を愛する人も、アートファンも、物語のファンも存分に深掘りができる。マンガを紙で読む意義やありがたみを体感しました」(幅)
『「ONE PIECE ONLY」展』
~2025年1月13日。〈PLAY! MUSEUM〉東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟。無休。観覧料2,400円。チケット購入者特典の公式図録は非売品。ゴールドに艶めく特装版も販売。装丁はともに大島依提亜が手がけた。
photo_Shintaro Tohyama text_Hikari Torisawa