保健室のタブレットで心の不調をキャッチ 11の質問から命を守る取り組み
「親御さんには直接言い出せなかったのかな。保健室に来たのは誰かと話をしたかったからだと思います。RAMPSがきっかけとなって、どこから話せばいいのか悩むことを単刀直入に打ち明けてくれたと感じます」 この男子生徒のような自殺準備までいかずとも、自傷行為をしている生徒が多いこともRAMPSによって浮き彫りになったという。彼らは「親には迷惑をかけたくない」「自分さえガマンすればいい」と考え、悩みを一人で抱え込んでいることが共通していた。 同校では昨年から、県教育庁のプログラムに基づき、SOSの出し方の授業を行っている。その際、県教育庁が開設している夜間対応の相談窓口を案内することで、下校後や学校が休みの時にリスクをキャッチし、学校につないでもらうケースも出てきたという。
問題なく見える子も自殺リスク
RAMPSで自殺リスクが発覚したことから、SOSを出せるようになった子もいる。県立B高校のベテラン養護教諭は、ある女子生徒のケースを挙げた。
「欠席はないし、友だちもいるし、自己肯定感が低いとはまったく思っていなかった子。ところが、腹痛を理由に来室したときにRAMPSを使ったら、自殺リスクが高いとわかったのです。びっくりしながら問診すると、実際に実行に移そうとしたという話が出てきました」 女子生徒いわく、小中学校では成績優秀だったが、日常的にうっかりミスが多かった。高校に進学すると、頑張っても成績が上がらなくなった。それでも親から「もっと頑張れ」とプレッシャーをかけられるうち、「なんて自分はダメなんだろう」と死にたいほどに追い詰められたという。 養護教諭は母親とすぐ面談し、継続した支援が必要だと精神科医療の受診を勧めた。従来はそうした勧奨も簡単ではなかったと、今回取材した養護教諭の多くが語った。生徒の精神不調や発達障害を疑い、保護者へ医療機関の受診を勧めても、「うちの子がおかしいというのか」と反発されることが多かったためだ。 だが、RAMPSを使うとデータがある。それによって話がスムーズになったと養護教諭は言う。