令和だけども!「24時間働けますか?」の精神で働いていた50代経営者…自らの働き方を見直すきっかけになった若手経営者からの“耳が痛い”ひと言とは?
「責任感が強く、なんでも自分でやりたいタイプ」で社長になっても社員より先に自ら精力的に動き回っている創業10年の会社社長の川口さん(仮名)。部下から「社長、少しは私たちを頼りにしてくれませんか?」と言われてもどこ吹く風。相変わらず忙しい毎日を送っていました。しかし、ある若手経営者との出会いをきっかけに、川口さんはこれまでの経営者としてのあり方を見直すことに……。本記事では、世界で20万社以上のユーザーを持つ起業家のための経営システム「EOS(the Entrepreneurial Operating System)」の日本人唯一専門家である久能克也氏が、事例を通じて組織化と権限委譲の重要性を解説します。
創業10年、社員12名、年商2億円。武器は「率先垂範」
4月に創業10周年を迎えたA社。社長の川口さん(仮名)は50代の男性で、大学を卒業して入社した会社では一貫して営業に従事してきました。40代の頃に、営業畑で培われた経験やノウハウを活かして、数人の仲間たちと営業代行を行うA会社を創業。最初の3年間は苦労の連続でしたが、持ち前の営業力を活かして仕事を受注し、徐々に会社を大きくしていきました。 年商が5,000万円を超えたところで社員の採用にも力を入れ始め、現在では年商2億円、社員12名、パート・アルバイト15名の規模にまで成長しました。ここ数年は、企業向けの「営業コンサルティング」や「営業研修の実施」、さらには「営業支援ツールの開発」など事業の多角化にも着手。さらなる飛躍を目指して日々、忙しく立ち働いています。 川口社長の性格はいたって真面目。責任感が強く、なんでも自分でやりたいタイプです。現在でもトップ営業として企業を訪問しており、コンサルティングや研修の場にも積極的に参加。発注先の企業とともに開発しているツールのチェックや内容の精査も行うなど、「あの社長は分身の術が使えるんですか?」と冗談交じりに言われるほどの活躍です。 一方で、問題もありました。 創業当初から共に働いている幹部を含め、社員らは、精力的に働いている川口社長を頼もしく思いながら、会社の先行きに一抹の不安を抱いていました。彼は社内のすべての業務をチェックしているのですが、そのせいで現場の仕事が滞ることが多かったのです。 あるとき、副社長を務める創業メンバーの1人が、川口社長にこう切り出しました。 「社長、少しは私たちを頼りにしてくれませんか?」 川口社長は副社長の真意がわからず、「何を言ってるんだ。他社の社長はもっと働いてるよ。心配するな」とだけ返し、また仕事に戻ってしまいました。しかし、副社長が本当に伝えたかったのは、働き過ぎている社長への労いではありません。もう少し他のメンバーを信頼して、仕事や、権限を任せてもらいたい、と言う思いでした。
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