釜山国際映画祭に見た、映画祭が「脱映画」を図る未来。現地では「動画配信作品」が勢いを増していた。
アジア最大級の映画祭『第29回釜山国際映画祭』が、韓国・釜山で10月2~11日の10日間開催された。 【写真で見る】釜山国際映画祭の様子。松重豊や、有村架純、坂口健太郎らの姿も 世界63カ国から224本の招待作品(うちワールドプレミア66本、インターナショナルプレミア13本)が、7劇場28スクリーンにて上映された。日本映画は、国際合作や短編を含む20作品が出品され、現地を訪れた監督や俳優たちは、例年通り映画熱の高い若い世代の観客の声援を集めた。 今年も盛況だった同映画祭には、興味深い動きも見られた。それは、OTT(ネットを介した動画配信)の作品が例年以上にフィーチャーされたこと。観客も当たり前のように映画と変わらず受け入れ、盛り上がっていた。
アジア最大級の映画祭は、エンターテインメントの未来のために、必ずしも劇場映画だけをメインにはしない、“脱映画”の方向性を定めようとしている。 ■華やかだった頃の映画祭が戻ってきた 韓国の興行市場は、コロナ禍から昨年まで深刻な不況が続いていたが、今年は1000万人動員を超えるヒットが続くなど、復調の兆しを見せている。 そんな映画業界の勢いを反映するかのように、今年の同映画祭は昨年より上映作品が20本ほど増えたほか、劇場数、スクリーン数ともに増加。かつての華やかだった頃の映画祭への回帰の流れが感じられた。
今年の映画祭は、開催前に運営トップの辞任が相次いだ昨年とは打って変わり、今年2月に新理事長に就任したパク・グァンス氏の下でスタート。運営陣の刷新による映画祭予算の縮小も報道されたが、体感としてはここ数年とほぼ変わらない。マーケットでは新たなプログラムがスタートし、積極的な映像ビジネスの拡大に向けた姿勢が見受けられた。 また、今年はシャネルがメインスポンサーに加わり、賞の新設(カメリア賞:アジアにおける映画界での女性の芸術的貢献を表彰)や、作品上映前に同ブランドのショートストーリー(ペネロペ・クルスとブラッド・ピット出演)を上映するなど、映画祭を華々しく飾った。