釜山国際映画祭に見た、映画祭が「脱映画」を図る未来。現地では「動画配信作品」が勢いを増していた。
■黒沢清監督や、松重豊に注目が集まる 映画祭に参加した日本の俳優陣や監督たちにも、多くの関心が寄せられた。 アジアのメディアから注目を集めたのが、黒沢清監督だ。黒沢監督は、アジアン・フィルム・メーカー・オブ・ザ・イヤーを受賞。アジア映画産業と文化の発展にもっとも貢献したフィルムメーカーを表彰する賞であり、過去の日本人受賞者には坂本龍一、是枝裕和監督、鈴木清順監督、若松孝二監督などが名を連ねる。現地記者会見には多くのメディアが詰めかけた。
『劇映画 孤独のグルメ』で釜山凱旋となった松重豊も、注目を集めた1人。本シリーズは、2019年の年末スペシャルドラマで釜山ロケを行ったほか、今回の劇場版でも物語の舞台のひとつになり、松重にとって釜山は馴染み深い場所だ。 すでにドラマ版が韓国でも人気の同作だが、劇場版のワールドプレミア上映(世界初上映)の地に縁のある釜山を選んだことで、同映画祭では、オープニング作品、クロージング作品に次ぐ扱いで迎えられた。
日本映画に関しては、映画祭出品数は例年並みだったが、大手映画会社の商業大型作品は減っており、同時にオープニングセレモニーへの監督や俳優の出席者が減少していることも感じられた。そのあたりは昨今の日本映画の作品ごとの懐事情が反映されているのかもしれない。 一方で、開幕日以降の上映にあわせた独立系の中小規模作品からのゲスト参加もあり、それぞれ上映後のティーチインイベントでは観客との積極的なセッションが行われて、映画祭を盛り上げていた。
日本作品の上映や受賞があった中で、映画祭併設マーケットのACFM(Asian Contents & Film Market)では、「プラットフォーム釜山」や、新たなプロデューサープログラム「プロデューサー・ハブ」が開催された。日本からも多くの監督やプロデューサーが参加し、韓国をはじめとしたアジアの国々との合作に向けたミーティングやネットワーキングに励んでいたほか、国外で数々の賞を受賞したプロジェクト『Push-button Syndrome』(押しボタン症候群)の藤田可南子プロデューサーと村上リ子監督は、同作の制作に向けたセールス、マーケティングにも動いていた。