名将うならせる1年生セッター&準決で最多得点「小さな大エース」候補 高校総体3位の東龍、日本一奪回担う「がばいコンビ」
大分県中津市などで開催された全国高校総体(インターハイ)のバレーボール女子で、地元の「東龍(とうりゅう)」こと東九州龍谷(大分)が3位に入った。主将の忠願寺風來(ちゅうがんじ・かえら、3年)に引っ張られ、妹でエースアタッカーの忠願寺莉桜(りおん、1年)ら下級生主体のチームは奮闘。優勝した金蘭会(大阪)との準決勝では予選グループ戦でストレート負けを喫した相手から1セットを奪った。2019年度の全日本高校選手権(春高バレー)以来、遠ざかっている日本一奪回へ、相原昇監督(56)も「上出来」と手ごたえを口にした大会。中でも光ったのが佐賀県出身の「がばいコンビ」だった。 (西口憲一) ■【写真】味方のサーブ時に手を握り合う吉村はぐみと藤﨑愛梨。佐賀県選抜で活躍した中学時代から信頼関係を築いてきた 先発メンバーの平均身長は金蘭会が176センチで、東龍が174センチだった。高さとパワーで劣る上に、チーム内の年代別日本代表の人数でも金蘭会の7人に対し、東龍は忠願寺(莉)の1人。大舞台の経験値もかなわない。それでも予選グループ戦の再戦となった準決勝はフルセットに持ち込んだ。相原監督が収穫に挙げた「最後の1点の取り方」―。理想的な攻撃をつかさどったのが1年生セッターの吉村はぐみだった。
2種類のトスを使い分け
181センチの長身でライト側からの攻撃を担うエースの忠願寺(莉)だけに頼るのではなく、相手守備を振り切るように逆サイドへ速いトスを飛ばした。今大会の優秀選手にも選ばれた梶山葵(3年)と藤﨑愛梨(2年)の両レフトを交えながら、コートの横幅を目いっぱい使ってオフェンスを組み立てた。スピードとテクニックを駆使した伝統の「高速コンビバレー」を堂々と指揮する姿に、相原監督も「試合で(高さと速さの)2種類のトスを使い分けるのは難しい。でも、吉村はそれができる」とうなずいた。 セッター出身の相原監督が非凡なハンドリングと同様に高く評価しているのは勝負度胸だ。「どんな場面でも肝が据わっている」と、司令塔に不可欠な要素を高校に入学して約4カ月の15歳から感じ取っている。 「今までだったら、負けているときは同じ人に上げてしまいがちでした。だから、一人に集めすぎないように、小さくならないように心がけました」。忠願寺(莉)とともに初めてのインターハイでは「楽しむ」を念頭にプレーしたという。「負けることを恐れずにできたからこそ、金蘭さんとの試合(準決勝)もフルセットまでいけたと思います」。笑顔でうなずいた。