なぜ今、イトーヨーカドーは紙媒体を始めたのか? フリーマガジン『はとぼん』を出す意図に迫る【インタビュー】
〈スマホの小さな画面よりも“買いたい”と思える紙面、一覧性に優れる紙媒体の強み〉
そして今あえて紙媒体を選択した理由について望月氏は「なぜデジタルではないのかとよく聞かれるが、逆になぜデジタルなのかを聞きたい。皆デジタルだけで暮らしているわけではなく、実際にフィジカルにお店に行って買い物をしている。デジタルを推す方の大半は、継続的に効果を追えるという意味で推しているように思うが、それはお客様目線ではなくメーカー目線・広告目線なのではないか。確かに紙媒体だと見た/見ていないを追えないので厳密な効果検証が難しいが、私たちの商売はやはりお客様に買っていただきたいわけで、買いたいと思っていただかないとうまくいかない。それがスマホの画面と(ビジュアルにこだわった)紙媒体のどちらが商品を買いたくなりますか?ということだと思う。紙媒体は一覧性に優れ、スマホのウェブでここまで力のあるクリエイティブはまずできない。デジタルか紙媒体かが始まりではなく、お客様が買いたいと思うクリエティブは何か?がまず大前提となる。とはいえ印刷部数の問題もあり、より多く届けるためにはウェブやアプリ、サイネージに波及させることも必要だ」と話す。
なお、すでに同社では『はとぼん』の内容を店頭のPOP、サイネージや、別刷りのチラシ、リーフレットとして活用する取り組みを行っている。また、『はとぼん』の内容は同社WEBサイトで閲覧することも可能だ。 そして、何も同社「リテールメディアプロジェクト」は紙媒体を作るためだけの部署ではない。今後の方向性について望月氏は「これまでメーカー様との取り組みも(一時的に)商品を売らんかなという形だったが、継続的に買っていただけるような考え方で改めてコミュニケーションを再設計していきたいと思う。 具体的には、今後イトーヨーカドーアプリのリニュアールを検討してきたいと思っていて、その中でもお客様に情報を伝えることをやっていきたい。言葉で言えばCRM(Customer Relationship Management)になると思うが、商品やブランドのファンをアプリの中で作っていきたい。そのきっかけとしてこの『はとぼん』のようなクリエイティブがあり、それをデジタルでも活用して商品のファンを作り、結果としてその集合体がお店のファンにもなってもらえるということだと思う」など話した。
SMの棚そのものも商品だけで表現する「メディア」と捉えることもできるが、情報としては商品名・パッケージとせいぜい小さなPOP位のもので、ともすると「価格」が最大の情報となってしまう。もちろん価格も重要な要素だとしても、商品の背後のストーリーを、しかも一覧性がありクリエイティブにこだわった紙媒体で伝えることで、商品そのものの価値を高め、ひいてはお店全体の価値を高める取り組みということだろう。 このところ何かとニュースを賑わせる同社ではあるが、本来国内有数の力がある企業であり、さまざまな新しい取り組みが進められていることにも注目したい。
食品産業新聞社
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