米粉でたこ焼きって作れるの? 相性良し 舌触り滑らか 粒度小さいものがお薦め
だしの香りとトロっとした食感で人々を魅了するたこ焼き。9月に大阪に赴任した記者も魅せられ、早速たこ焼き器を購入した。しかし、どうせなら国産の材料でおいしいたこ焼きを作りたい――。「粉もん」文化の中心地・関西で米粉たこ焼きの可能性を探った。 【画像で見る】奈良女子大・齋藤助教による試験結果
膨らみ問題なし
「米粉とたこ焼きの相性はすごく良い」 そう強調するのは、米粉の特性に詳しい奈良女子大学の齋藤公美子助教だ。注目するポイントの一つが、粒の細かさ。パンなどに使われる微細米粉には粒子径が20~30ミクロンと小麦粉より細かいものもある。粒が細かいほど「滑らかな舌触りになる」(齋藤助教)といい、商品パッケージに記載がある場合は「粒度が小さい米粉を選ぶのがお薦め」(同)だ。 吸油率の低さもポイントだ。米粉は小麦粉と比べて油を吸いにくい。そのため、油を多く使っても生地がべたつかず、外側がカリっとしたクリスピー食感になるのも米粉たこ焼きの特徴という。 生地の膨らみも確認した。齋藤助教が「微細米粉のみ」「小麦粉のみ」など複数の条件下で調理したたこ焼きを評価したところ、米粉だけでも十分膨らむことが分かった。パンの膨らみを助けるグルテンを含まない米粉だが「たこ焼きは細かな気泡で膨らませる必要がなく、グルテンの有無が膨らみに影響しないのでは」(齋藤助教)と推察する。
観光客にも人気
こうした特性を強みに、たこ焼き激戦区の大阪で米粉たこ焼きを提供する店がある。大阪市平野区に店を構える「たこ焼きあーこ」は、2019年の開店時から米粉を使った粉ものを提供。看板メニューの一つ「米粉たこ焼き」(5個400円)は、店主の山田静奈さん(61)が粒度の違う複数の米粉で試作し、小麦粉に引けを取らない、中はトロッとした食感を実現した。 客は府外や海外からも訪れる。健康を意識してグルテンの摂取を控える人や、小麦アレルギーを持つ人などの利用も多い。山田さんは「どんな人でもおいしい粉もんを食べてもらえるよう、米粉メニューの提供を続けたい」と話す。 家庭でも米粉たこ焼きを作れるよう、米粉メーカーも商品開発を進める。京都府南丹市の朝日製粉所は、府産米「キヌヒカリ」を使ったたこ焼きミックスを販売。国産の煮干しとさば節によるだしの風味が特徴で、卵の代わりに豆腐や豆乳、水と米油で調理する方法も提案する。大手米卸の木徳神糧も新潟県産米を使った「米粉たこ焼粉」を3月に発売するなど、関西のソウルフードに新しい風が吹いている。