「ノーベル経済学賞」のアセモグル教授らに反論、国の経済発展をもたらすのは「政治制度」ではない
今年のノーベル経済学賞は『国家はなぜ衰退するのか』という著作でも有名なダロン・アセモグルMIT(マサチューセッツ工科大学)教授らが受賞した。 ■国家の政策として重要なのは、社会資本を蓄積すること 前回の記事「石破政権の誕生は『日本経済正常化』の第一段階だ」(10月5日配信)でも言及したが、この著書の基になった研究が主な授賞理由である。 彼らの主張は、要は「中央集権化がある程度進んでないと国家として持続的に成立しない。
しかし、成立したとしても、その後は独裁制などの搾取的な政治制度では破綻してしまい、健全な民主主義が必要である」ということだ(なお詳細についてはアセモグル教授の「現在進行形の弟子」MIT博士課程に在籍している菊池信之介氏の記事「アセモグルの弟子が解説、24年ノーベル経済学賞」も出ているので、是非読んでいただきたい)。 これは、第1に、半分正しいが、つまらない。誰でも知っている。第2に、半分は間違っており、独裁でも経済発展は起こる。民主主義でも発展しないことも多い。民主主義を制度的に整えても必ずしもうまくいかない。これは、アセモグル教授も認めている通りだ。実際、現在、民主主義は危機を迎えている。民主主義自体が危ういし、その理由は民主主義で社会が豊かになっていない、いや今や徐々に悪くなってきていると人々が感じているからである。
政治制度は表面的なもので、手段であり結果でもあり、その奥に真の理由がある。よい社会は手段として良い民主主義を確立し、機能させることができる。そして、その真の理由こそが「社会資本」だ。これは1990年代のSocial Capitalの議論と同じだ。よい政治を機能させ、経済をよい形で発展させる基盤は社会、社会資本であり、もし国家が社会を導くのであれば、国家の政策として重要なのは、社会資本を蓄積することである。これは前回も主張したところだ。