名スカウトのドラフト採点。狙いが不透明だった巨人、阪神。
前代未聞の当たりクジの確認ミス事件が起きた2015年のドラフト会議。1位競合したのは、県岐阜商業、高橋純平投手(中日、日ハム、ソフトバンク)、明大の高山俊外野手(阪神、ヤクルト)、仙台育英の平沢大河内野手(楽天、ロッテ)の3人。それぞれソフトバンク、阪神、ロッテが引き当てて、外れ1位では、東海大相模の小笠原慎之介投手が、日ハム、中日で競合。過去、大谷翔平、有原航平を引き当ててきた日ハムが、今回は2連敗を喫した。 最多人数指名は、西武、オリックスの10人。育成を含めると、8人を指名し育成でも8人を指名した巨人が最多の16人。逆に最小は、ヤクルト、阪神の6人で育成指名もなかった。 指名構成で見ると、ロッテは1位の平沢以外は、全員投手を指名。逆に外れ1位で、注目の関東第一のオコエ瑠偉外野手を射止めた楽天が、育成も含めて、野手6人、捕手2人で、投手は1人という対照的な指名構成となった。合計116人(そのうち育成が28人)もの将来のスター候補達が、ドラフト指名されたが、果たして、ドラフトに成功したチームは、どこだったのだろうか? 本当のドラフトの成否は、3年先、5年先を見なければわからないものだが、ヤクルトのスカウトの責任者を30年以上も続け、ドラフトの裏も表も知り尽くしている元名スカウトの片岡宏雄氏に、独自の視線で2015年のドラフトを総括してもらった。 「今年のドラフトの特徴は、上位指名に野手が目立ったことだろう。バランスの取れたドラフトをしたチーム、来年の補強に成功したチーム、将来を見据えたドラフト方針を貫いたチーム、ゼロからのチーム作りに着手したチーム、何がしたかったのか、プロセスも狙いも見えなかったチームと、様々なドラフト模様となった。夏の甲子園で目についた素材や、大学、社会人の即戦力選手は、だいたいが抑えられていた。指名の総人数が育成も含め110人を超えたのだから、それだけ人材が豊富な年だったということだろう」 片岡氏が、最もバランスの取れた成功のドラフトと評価したのは中日だ。 「1位で地元の高橋はクジで外したが、素材としては甲乙つけがたい小笠原を1位で指名できたのは大きいだろう。世代交代を進める中で大型ピッチャーの欲しかった中日にすれば、いい選手を外れで引き当てた。谷繁監督が監督専任となり一番の補強ポイントであった捕手にも社会人ナンバーワンの評価のある木下拓哉(トヨタ自動車)を取れた。バッティングはともかく守備は使える。即戦力の中継ぎ候補に、大学、社会人のピッチャーを2人抑え、タイプの違う内野手も2人、社会人から取った。チーム内で競争を起こしたいポジションだと思う。育成でも投手を5人指名した。トータルで最もバランスの取れたドラフトをした」 バランスで言えばオリックスも評価したいという。 「西武とオリックスは、それぞれも10人も獲得した。球団の姿勢に意欲を感じる。オリックスは、パンチ力ではピカ一の大学日本代表の4番打者、吉田の一本釣りに成功し、2位では、中継ぎで使い勝手のいい社会人の近藤を指名した。また下位で、東海大相模の吉田、仙台育英の佐藤という高校生2人を獲得している。佐藤の伸びシロには未知なものがあるが、フォークはプロで即通用するのかもしれない。吉田も化ける可能性がある」