巨大なアメジスト(紫水晶)晶洞、その形成の仕組みを解明
アメジスト(紫水晶)の巨大な晶洞は、定常的な地下水流の中で、予想外に低い結晶化温度で形成されることを、地質学的調査と詳細な化学分析によって突き止めたとする研究結果が発表された。 【画像】深い紫色をした巨大なアメジスト晶洞 南米ウルグアイのロス・カタラネス地区は、深い紫色をした高品質の宝石アメジストの産地として知られており、高さ5mを超える壮麗な巨大晶洞(ジオード)が見つかることもある。ここのアメジスト鉱床は、世界の地質遺産100選の1つに認定されており、その科学的および自然的価値を浮き彫りにしている。 アメジストの結晶は、溶岩流内で見つかる。溶岩流の年代は、ゴンドワナ超大陸の最初の分裂が起きた約1億3400万年前にさかのぼる。溶岩が固化した後、ケイ素を豊富に含む流体が岩石中を循環することで、二酸化ケイ素(SiO2、石英)の結晶(水晶)が火山洞窟内に析出した。アメジストとして知られる種類の水晶は微量の鉄を含むため、特徴的な紫色をしている。 だが、どのようにして晶洞がこれほどの大きさにまで成長できるのかは謎のままだった。晶洞の大半が小さいのは、溶岩中の気泡の内部で形成されるからだ。稀なケースとして、溶岩にガスが非常に多く含まれるために、火山角礫岩内で非常に大きな隙間ができたり、より大きな空洞が開いたままになったりすることがある。結晶が成長するには(流体の温度、圧力、化学組成などの)適切な条件と長い時間が必要だ。だが、そのような完璧な条件が満たされることは、自然界ではほとんどない。 ドイツ・ゲッティンゲン大学の研究者が主導した今回の研究では、巨大なアメジスト晶洞が、予想外に低い結晶化温度において、定常的な地下水流があるおかげで形成されることを明らかにした。 研究チームは、現在も稼働中の鉱山30カ所以上を対象とする大規模な地質学的調査を実施し、晶洞に含まれる鉱物(主にアメジスト、他に方解石や雲母も)と、晶洞内に閉じ込められたままの流体(主に水)および周囲の地下水の化学的特性を分析した。 分析の結果、アメジスト晶洞は15~60度と予想外に低い結晶化温度で形成されたこと、また、鉱化流体は塩分濃度が低く、地下水帯を涵養している地表からの降水と同位体比が一致することが、それぞれ明らかになった。 今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、ゲッティンゲン大学の地球科学センター博士研究員のフィオレラ・アルデュイン・ロデは「高精度の最新手法を用いることで、自信を持って鉱化流体の温度と組成を推定できた」と説明する。「これらのアメジストが地下水のような流体から低温で結晶化したとする説を、今回の研究結果は裏付けている」