混戦のJリーグ 台風の目はFC東京とガンバ大阪
首位の浦和レッズを勝ち点1差で川崎フロンターレが追い、さらに勝ち点2差でサガン鳥栖が続く。毎年のようにドラマを刻んできたJ1戦線は、今シーズンも大混戦の様相を呈している。各チームとも20試合を消化。夏の移籍ウインドーも締め切られた状況下で、3月の開幕直後とは明らかに異なる戦いぶりを見せているチームが2つある。元日本代表MFで、現在は解説者を務めている水沼貴史氏は「FC東京とガンバ大阪に勢いを感じる」と指摘する。 「FC東京は今シーズンから指揮を取る、イタリア人のマッシモ・フィッカデンティ監督の戦術を選手たちが完全に理解し、試合中のシステム変更などにもスムーズに対応できるようになってきた。ガンバは中断期間中に獲得した新外国人、FWパトリックの存在が非常に大きいと思う」。 FC東京は開幕4戦を2分け2敗、得点3に対して失点8と大きく出遅れたが、第5節の清水エスパルス戦で挙げた初勝利を契機に守備が安定。以降の16戦で許した失点はわずかに「7」で、8試合連続の負けなしで順位を5位にまで上げてきた。現在はクラブタイ記録となる5試合連続完封中だ。 46歳のフィッカデンティ監督は、日本代表DF長友佑都(インテル)が2010年7月に加入したセリエAのチェゼーナで指揮を執っていたことで日本でも知られている。守備組織の構築を得意としていて、肝心な試合で脆さを露呈して中位に甘んじていたFC東京に勝負強さを注入する仕事を託された。 基本フォーメーションは、日本代表のハビエル・アギーレ新監督も採用する予定の「4‐3‐3」。ザックジャパンに招集された経験を持つ高橋秀人がアンカーに配置された、逆三角形型の中盤がここにきて上手く機能してきていると水沼氏は指摘する。「高橋と、その前方でインサイド・ミッドフィールダーとして起用されている米本拓司が非常に効いている。特に素晴らしいのが米本。もともと相手ボールを奪って、前に運ぶ力に長けている選手だった。中断前の横浜F・マリノス戦でボールを奪いながら前線でのアイデアに欠け、孤立したシーンがあったので、試合後にその点を聞いてみると『そこは僕に求めないでください』と苦笑いしていた。自分に足りない点がわかっていた証であり、いま現在はミドルシュートを含めて、フィニッシュへの意識がすごく強くなってきた。アギーレ監督が求める選手像に、最もマッチしていると言っていい。先のワールドカップでも活躍したフランス代表のポール・ポグバや、チリ代表のアルトゥーロ・ビダルにも通じる部分がある。4‐3‐3の中盤に最もフィットする選手なのかもしれない」。 兵庫・伊丹高校から加入した2009年にいきなりレギュラーを獲得し、岡田武史元監督の下でA代表デビューも果たした逸材。2度に及んだ左ひざ前十字じん帯の断裂を乗り越えてきた23歳の苦労人は、イタリア人指揮官との出会いで再び眩い輝きを取り戻し、攻守両面でFC東京の「心臓」を担っている。