【羽生結弦30歳で新たな“氷現者”に】『音』でつないだ『命』のパフォーマンス、単独公演第3弾の開幕
「ピアノのクラシックの連続のところからの『バラ1』。今までやったことのない、1回も(バックステージに)はけないで、30秒間ずつくらいずっとプログラムを演じ続けるみたいなことをやっています。(ピアニストの)清塚信也さんと一緒にクラシックのことも勉強し、振り付けをお願いしているジェフリー・バトルさんとも『こんなイメージで滑りたい』ということを綿密に打ち合わせしながら作ったプログラムです」 途切れることのない怒濤のプログラムの連続の中でも、回転軸が細い4回転ジャンプも、高さと幅を兼ね備えた王道のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も健在であることを見せつけ、緩急の効いたディレイドアクセルでも魅了した。
30代への決意新たに
テーマだけでも、スケートだけでもない。羽生さんの思考とパフォーマンスが織りなす唯一無二のアイスストーリーを結実させた羽生さんにとって、この日は30歳のバースデーだった。 1万4000人の観客の大熱唱で祝福された羽生さんは「自分が幼い頃からずっと思っていた30代というものと現在、自分が感じている体の感覚や精神状態は、全く想像と違っていたなと思います。自分の中では、フィギュアスケート年齢としては、劣化していくんだろうなという漠然としたイメージがありましたが、まだまだやれるなという気持ちでいます。自分自身の未来に希望を持って、(30代も)練習もトレーニングも本番も臨みたいなと思います」と決意を新たにした。 競技者からプロへ、アイスショーをアイスストーリーへ。従来の枠組みにとらわれることなく、氷上に次々と変革をもたらしてきた羽生さんは、この先においても、まだ誰も見たことがない「進化の世界」を30代で体現してくれるはずである。
田中充