選手たちに存分に味わってほしい、五輪の「特別な高揚感」【松田丈志の手ぶらでは帰さない!~日本スポーツ<健康経営>論~ 第6回】
いよいよパリ五輪が開幕しました。この原稿執筆時点ではわかりませんが、まずは競技場以外での開催が史上初となるセーヌ川沿いでの開会式が成功していることを願っています。 【写真】3大会連続で五輪メダルを獲得した松田 開会式において、各国選手団で最も注目されるのは旗手ですね。今大会の日本選手団の旗手を務めるのは女子フェンシングの江村美咲(えむら・みさき)選手と、ブレイキンの〝シゲキックス〟こと半井重幸(なからい・しげゆき)選手です。両選手とも金メダルが期待される注目選手であり、旗手として日本選手団の「顔」を務めます。 日本は、前回の東京2020大会まで旗手とは別に主将を設けていましたが、今大会から廃止しました。そもそも選手団の主将というのは日本独自の制度で、ほとんどの国にはありません。 廃止の理由として、東京2020大会より、国際オリンピック委員会(IOC)が旗手をこれまでの1名ではなく、ジェンダーバランスを考慮して男女2名にするよう要請してきたことがあります。東京2020大会では男子バスケの八村塁(はちむら・るい)選手と女子レスリングの須崎優衣(すざき・ゆい)選手が日本選手団の旗手を、主将は男子陸上の山縣亮太(やまがた・りょうた)選手が務めました。旗手男女2名の制度がパリ大会でも採用されており、今後も継続されるでしょう。 旗手が男女2名となり、日本独自の主将という役割が必要なのかも検討が進められてきました。主将に任命されると、日本国内では選手団の代表として注目されますが、実際には旗手のように「開閉会式で旗を持つ」という明確な任務が与えられるわけではありません。しかし、旗手と同様に本番の開閉会式だけでなく、大会前に国内で行なわれる壮行会や大会後のさまざまな式典やイベントにも主将として出席することになります。主将というだけでプレッシャーもかかりますし、開閉会式や式典への出席は時間も拘束されますから、コンディション調整にも少なからず影響します。 かつては「主将になると結果が出ない」など根拠のないジンクスが語られることもありました。大会後のメダリストだけが参加するイベントにも、主将であった選手は仮にメダルを獲得していなくても参加しなければならないなど、いろいろなところで負担が大きかったと思います。そのような負担を選手にかけないようにと、日本の主将制度は今大会から廃止されました。私も主将の廃止には賛成です。 主将や旗手に限らず、五輪代表選手は大会前から、結果が出れば大会後も、日本オリンピック委員会(JOC)関連のイベントやメディア対応、所属企業のイベントなどで大忙しです。私は先月、これまで数々の五輪選手を輩出している旭化成株式会社のパリ五輪出場選手の壮行会に呼んでいただき、トークショーのナビゲーターを務めました。私の地元である宮崎県延岡市には旭化成柔道部と陸上部の練習拠点があります。かつては水泳部もあって、私を長年指導してくれた久世由美子コーチは旭化成水泳部の選手でした。