トランプ米前大統領の有罪評決、「34の重罪」の意外な中身…それでも「もしトラ」シナリオが加速するワケ
口止め料の支払い自体が罪に問われたわけではない
トランプ氏が重罪に問われたのは、「不倫」や口止め料の支払いではなく、口止め料の記載の仕方だった。 ニューヨーク州の法律に基くトランプ氏の罪状は、「第一級業務記録改ざん罪」。単なる「業務記録改ざん」なら軽犯罪だが、業務記録の改ざんが「他の犯罪を隠蔽するなど欺く意図をもって」行われた場合には、重罪になる。 ではこの「他の犯罪」が何だったかというと、検察側はニューヨーク州選挙法17条152項の選挙陰謀罪や連邦選挙法が該当する可能性を挙げた。つまり、有権者が大統領候補者を見極めるのに必要な情報を隠匿した選挙不正だったというわけだ。 検察側陳述によれば、トランプ氏が2016年の大統領選への出馬を表明したばかりの2015年8月、ニューヨークのトランプタワーにトランプ氏、コーエン氏、それにセレブのゴシップ雑誌などを発行するメディア事業のオーナー経営者、デービッド・ペッカー氏が集まった。 この三人の間では、大統領選を優位に進めるため、トランプ陣営にネガティブな情報を事前に察知して潰す作戦が話し合われたという。ペッカー氏の媒体が情報提供者と独占契約を結んで情報を「買い上げ」て他の媒体に持ち込まれることを防ぎ、選挙が終わるまで情報が公にならないよう共謀したというのだ。 このプランに従って、トランプ氏の隠し子疑惑(のちに根拠のないものと判明)、プレイボーイ誌のグラビアモデルとの交際、という2件の情報をペッカー氏の媒体が買い上げて潰した。 ところが、ペッカー氏が一時的に「立て替えた」つもりになっていた口止め料がトランプ氏から返済されなかったことなどから、3件目のダニエルズさんの話が浮上した時には、ペッカー氏が情報買い上げを拒否したのだ。やむを得ず、口止め料の13万ドルは、顧問弁護士のコーエン氏が個人で立て替えることになった。 大統領選挙後、トランプ氏がそれを一族のファミリー企業を通じて月払いの分割にしてコーエン氏に返済することになったのだが、ファミリー企業もさすがに「AV女優への口止め料立て替え金返済」などと帳簿に記載するわけにはいかなかったのだろう。 それは、コーエン弁護士への「顧問料支払い」だった、と使途を偽って記載されたのだ。