トランプ米前大統領の有罪評決、「34の重罪」の意外な中身…それでも「もしトラ」シナリオが加速するワケ
「34の重罪」の具体的な中身とは?
実際には「34の重罪」とは34の書類のことで、コーエン氏からトランプファミリー企業に送った11件の請求書、トランプファミリー企業内での12件の会計入力、そしてコーエン氏に支払われた11件の小切手、と3種類の書類が使途を偽って作成されたため、合わせて34の第一級業務記録改ざんの罪に問われたのだ。 筆者は20日近くに及んだ裁判記録に一通り目を通したが、書類改ざんについては、検察側はトランプ氏の署名入りの小切手など、証拠を綿密に積み上げた。 例えば、コーエン氏への払い戻しを「立て替え金返済」でなく「弁護士費用」とすると、コーエン氏に税金支払い義務が発生してしまう。そこで、それも考慮して15万ドルを42万ドルに嵩上げして支払いが行われた経緯の説明などは、実に詳細だった。 対する弁護側は、「いや、それは弁護士費用と書いてあるから弁護士費用だ」と主張したのみで、他の物証を挙げることができなかった。 ただし、トランプ氏が隠そうとした「他の犯罪」が何であり、その犯罪を隠そうとした「意図」を持っていたかどうかという点については、検察側は「明白な選挙詐欺」があったと主張したものの、これという証拠提示をしなかった――というか、この裁判ではトランプ氏は選挙陰謀罪に問われたわけではないので、それらは立証する必要はない、というのが検察のスタンスだったのだ。 本来、弁護側はこの点をもっと突くべきだっただろう。「他の犯罪を隠そうとした意図があった」ことについて陪審員が一人でも疑問に思えば、審理無効となっていたはずだからだ。 ところが弁護側は、ダニエルズさんは金目当て、コーエン氏は「史上最大の大嘘つき(Greatest Liar Of All Time)」と証人の信用を叩くことに多くの時間を費やし、性交渉や口止め料、書類偽造、トランプ氏の指示などが全て証人の嘘やでっち上げであったとする法廷戦術を取った。 依頼人であるトランプ氏の指示だったのかもしれないが、この戦術は逆効果だったように見える。 それに、何よりもトランプ氏自身が証言台に立たなかったことで弁護側主張の信憑性に大きな傷がついたこと、さらにトランプ氏が法廷にいたはずの時間にソーシャルメディアに裁判を批判する投稿をしていたことなども、陪審員の心証に少なからぬ影響を与えたようだ。