「ひとりでは無理だと思います」4大会連続五輪出場なし…低迷中の女子ロングスプリント界“最古の日本記録保持者”が語る「世界への壁を崩すには」
千葉以降、400mの世界大会に「15年以上不出場」
千葉が出場した2009年の世界選手権ベルリン大会を最後に、女子400mで世界選手権やオリンピックに出場する日本人選手がなかなか現れずにいる。いまは、再び日本の女子ロングスプリントは低迷期を迎えたと言っていい。 一時期、光が見えたこともあった。 2013年の日本選手権では、当時高校生の杉浦はる香(浜松市立高)が、千葉が持っていたジュニア日本記録を更新する52秒52で優勝し“スーパー高校生”と騒がれた。さらには、2位の大木彩夏(新島学園高)も、従来の高校記録を上回る53秒17で走り、新時代の到来を予感させた。 「当時は、私にとっても高校生が52秒で走ることが衝撃的でした。これで女子400mもレベルが上がるかなと期待はしたんですけど……」 その他にもこの年は有望な高校生が多かった。日本選手権で4位に終わった千葉は、若い選手の飛躍を心待ちにしていた。しかし、千葉や世間の期待とは裏腹に、彼女たちは苦しんだ。 「400mって結局、練習ができないと試合で走れないんです。でも、つらい練習を毎日するので、切磋琢磨できる人がいないとなかなか頑張れないんですよ。やっぱりひとりでは無理。どうしても『つらい』という気持ちが先にきちゃう。 (強い選手がそろった世代でも)学校が違うと一緒にはなかなか練習できないですから、どうしても難しかったのかな。たぶん私も、強い先輩があんなにたくさんいなかったら、絶対に日本記録なんて出せていなかった。普通の大学生で終わっていたと思います」 千葉は400mという種目において、練習環境の大切さを説く。 千葉が2008年に打ち立てた51秒75という日本記録は、依然として突出している。それ以降、51秒台の領域に踏み入れた選手は現れていない。それどころか、52秒台もわずかに4人がマークしただけだ。近年は千葉の時代よりも世界の記録レベルも上がっており、日本との差は開くばかりだ。 「私の頃もあんまり勝負はできていなかったんですけど、今は世界のレベルも上がってきているので、51秒台を出しても勝負はできません。今の選手たちにはもう一段階上を目指してもらいたい。地道にやっていくしかありませんが、まずはアジアで勝てるようになって、そこから世界で勝負できるようになるといいなと思っています。結構高いハードルだとは思いますが」 現在は陸上界を離れ、地元・福島県矢吹町の職員として働く千葉は、こう後進に希望を託す。
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